短歌  豊かな詩情の吐露

                          橫井傘二

短歌は20181月より神戸新聞に投稿足跡

  2021年11月22日 入選  
我が古稀の手の四倍と驚きぬインド料理のナンの大きさ

 2021年7月19日 入選  
食卓に檸檬一顆が残りをり酒に浮かすか本に載せるか

2021年5月3日 入選  
一万歩数へマスクを外しけり春の汗拭く高台の風

2021年4月14日 入選  
下萌えに元気出せよと囁かれ春の日射しに嬉しき心

2021年2月22日 入選  
おでん屋に香箱座りの猫がゐて我食ぶごとに目のみ動かす

 2020年12月7日 入選  
御簾上げて後の月見る人問はば納言か式部とぞ答へけり

 2020年11月16日 入選
響き良きあれちのぎくの音感よ古き歌集と君は言へども

 2020年8月10日 入選  
コロナ下に動脈解離の若き死や印刷工の政ちゃんおーい

2020年6月22日 入選  
若葉して自粛せざるも仕方なし五月の風にただ吹かれをり

  2020年5月4日 入選  
連翹の黄色き花に目を遣りしマスクばかりのバス行く刹那

 2020年2月17日 入選
単線の二輌電車に揺られゆく太郎坊宮年の瀬の旅

 2020年1月6日 入選  
通勤の冬の陽射しはかぎろひて海に溶けゆく人工の島

 2019年11月5日 入選
左手にアベノハルカス右手には通天閣ここに幸村斃る

2019年10月21日 入選  
駅前に妻待つ間反芻す来し方ざっと四十年ほど

2019年9月2日 入選  
ささやかな初盆なりしわが父の鵯越に老鶯の鳴く

2019年8月12日 入選  
子等笑ふ彼の姿の可笑しくも尺取り虫は懸命なのだ

 2019年7月1日 入選  
郡山こんな風にも売られたる自動販売機の金魚かな

 2019年6月12日 入選  
万歩計二万五千を数へてはやがて花散る雨となりけり

 2019年5月6日 入選  
人多きフェメール展を抜け出でば春雨濡るる紫木蓮見ゆ

 2019年3月6日 入選  
玉山と名前を変へし台湾の富士より高き新高山は

 2019年2月4日 入選  
今宵より始まるらしきルミナリエ昼間長閑な冬の神戸よ

 2018年12月12日 入選  
天国の有るや無しやは知らねども逝きて七年おーい宮本

2018年9月17日 入選
棺に入る亡父(ちち)に向かひて我ひとり夜はいつしか白々と明く

2018年7月11日  入選
初夏の日に蜃気楼なるめらめらが若葉に舫ふ原爆ドーム

2018年5月9日 入選
てやはるの川に遊(すさ)びし春鴨の尾を立て潜る水の煌めき

2018年3月26日 入選
玻璃窓に冬の赤月見えしとき生命あるもの息を調(ととの)ふ