あとがき

アマの、アマによる、アマのための詰碁集

                                
高野圭介


詰碁そのものがプロのジャンルで、アマの踏み込める余地はとても少ない。
詰碁の棋書も同様である。手元にある30冊の詰碁の棋書はアマ三冊を除いて、
すべてプロの所産になるのが、それが当然ということも昨今ようく判ってきた。



したがって、殆どの詰碁はあくまで創作で、プロの蘊蓄から生まれたものだ。
素晴らしい手筋で佳趣に富み味がある。当然とは言え、
プロの実戦は先々のヨミに裏付けられていて、
殆どのアマの世界の勘に頼った実戦とは根本的に土壌が違う。

アマが碁は楽しむためのもの、とは言っても、やはり強くなりたいと念じ、
詰碁の本を広げて詰碁を始めたら、「難しい!」と感じ閉じてしまう。
悲しいかな眠くなるのも判らぬでもない。
果たしてそのアマに役立つ詰碁の本は無いものか?

「おもしろ詰碁」はやさしい詰碁集である。親しみ易いから、
tumego of ama, by ama, for ama」と言える。
それを易し過ぎると言えばその通り。愚者の戯言かも知れないが
「おもしろ詰碁」の狙いはアマが楽しみ、実戦に役立つのが狙いである。

 その易しい詰碁に取り組んで驚いた。
取っ付きは易しいが、結構なかなかの難物ということも分かった。
詰碁棋書の上梓ともなればアマの手で次元を越えた幽玄の世界で
取り組んだようなものだから、アマの熱意と手探りの難産だった。

詰碁の要件を満たさない「失題」も結構あって、
これが「おもくろ詰碁」提唱の源となった。

プロ感覚の鮮やかな手筋で、美しく爽やかな詰碁に直面したときの、
宝物を見付け小躍りするような光悦の瞬間は編集者への贈り物であった。
だからこそ半年もの間、脇目もせず取り組めたものだ。



仲間があってこその出版事業貫徹である。
一番の仲間は詰碁創作者・井原嗣治その人。
共に永年歩んだ囲碁活動の証しである。

 いよいよの実践に当っては強力な助力があった。
川口隆司氏の粘り強い体当たり的な実行力。
パソコンのデーター作成に親身にご協力を頂いた内山和彦氏。
加えて交友印刷の櫻井司氏のご尽力
また側面から大いに力に預かったのは、将碁友の会の江口恭子氏。
地元風鈴会の吉田健、東屋弘ほか多くの棋友だち。
皆さま方に深甚の感謝の念が鬱勃と湧いてくる。

 ここに本書が陽の目を見て、独り歩きを始める。
私も人生の完成期の真っ只中。本書を以て囲碁活動の餞としたい。