二の2の怪

碁を早く打つことは「早見え」と「ぞんざい」のうらはらの進行が怖い。

                                           高野圭介

近眼も老眼も 
この歳になっても私は眼鏡というものが要らない。近眼にも老眼にもならない。
私は幼いときから視力が
0.7と、決して良いことではなかった。
2.0とか2.1などはよく見え過ぎて老眼になり易い。

不思議なもので、
0.7というのは便利な眼で、変化の無いまま歳を取る。



 動体視力
じゃあ、何も無いかというと、動体視力というのは別で、
加齢に準じて動くものを見るスピードに付いていかなくなる。

ゴルフで、止まっている球にもヘッドアップして打てにことがあるのに、
ましてやテニスなどちょっと振り回されたら足も追っつかないし、球も見失う。

錦織圭やジョコヴィッチのテニスを見ていると、ラケットに当たる瞬間まで
よく球を見ている。何もテニスだけで無い、野球にしたって同じだ。



今は高校野球の真っ只中の二回戦。6回の表、早稲田の清宮幸太郎が長打を打って、
東海大甲府を8対3と突き放したところ。最後まで球から目を離さない。
やはり眼が良いのだろう。球を打つとき、最後までしっかり球を見ているのである。

筋を 動く  
碁を打つとき、眼を皿のようにして盤中くま無く見ている。
石そのものは動かないが石と石の間には動く筋というものがあって、
石の白黒が絡み合って動く姿がありありと見える。

しかも、その読んでいく中で動いた陰影が残影となってくっきり眼に焼き付く。
それを「ヨミ」というのだが、碁に関係ない者にはとんでもない話だろう。
石田芳夫などは「ひと目千手」と豪語するほど正確で早い。

棋譜を逆に  
観点を変えたら、見えなかったものが見えてくる不思議な現象もあるようだ。
例えば小林光一が棋譜係の棋譜を手元に置いて逆にして見るなどだ。



速いか遅いか  
碁を早く打つことは「早見え」と「ぞんざい」のうらはらの進行が怖い。
早いに越したことは無いが、この両者は実は「諸刃の剣」であって、要注意。

かといって、じっくり読まないと打てないこともある。
ヨンでも読めなくて「下手な考え休むに似たり」とからかわれる。

錯覚 「二の2」
かって、碁吉会で13路盤ペア碁対局の時、思いがけないことが起きた。



小谷弘春さんが中島美智子さんと組んで打っていたとき、
相手の三の三に、中島さんが二の二に打ち込んだのである。
「あ、星と勘違いされたかな?」とは思ったが、
その錯覚のまま二線をずるずる這う羽目になった。

盤の大きさで、見る眼の錯覚が起きた。

  妄想「三の3」
碁盤の隅に「二の2」という特異点がある。

又、武宮正樹宇宙流が若い頃、19路盤で相手の二の二に三の三と打って、
「何と、大きいなぁ1」と、盤を見ている。「何か?」と聞いたら
「一手で、碁盤の広い所全体が自分のものになった。」と妄想中だった。

視点の置き方で極小が極大になる。見る眼が大事だ。

武宮ならでの逸話か、作り話か?

日本の妄想   


日本は太平洋のへそなのか? or 「二の2」」なのか?・・・赤旗(2015.8.02)より