感想戦の戦い

 ああ言やぁ こう言う


                     高野圭介

実戦ネット観戦
今朝早朝4時から竜星戦の「余正麒vs彦坂直人」の一局を観戦していた。
彦坂は好き放題に打たれて、お終いに大石が頓死してチョン。
物言わずの余正麒に石であれこれ言われて、流れの岐路に
その都度追い込まれ、追い込まれして、なすすべもなかった。

今回観戦するまではヨミの中身がこれほど違っているとは想像もしなかったが、
畏るべき余正麒の力量をまざまざと見せつけられた感じだ。



互先 彦坂直人 vs 先番 余正麒


163手以下略  黒中押し勝ち


            流れの岐路      高野説

 
黒63   黒69   黒95~101  黒105.107  黒115   黒147





 感想戦
二度目の戦い



勝負がついた。対局後、すぐ感想戦が始まった。

「ああ言やぁ こう言う」という感想戦が30分も続いた。
石が勝手にものを言って、どんどん図が描かれていく。

普通、時間が無くてこんなに中身のある感想戦も出来ない。
中身のある碁をたっぷり見て、堪能した。

感想戦でまた新たな発見が多々。
感想戦でも黒ダントツと思ったのは私だけではあるまい。

感想戦でも負ける 
一般に感想戦といっても理解しがたいと思う。
対局後、両者で率直に手の内を明かし、碁の検討をするのだが、
本番の時、実現しなかった副次的な着手で手順を追うこともある。

普通、本番の碁で負けて、感想戦でも負けたら、二重にやられて、
後は劣等感で立ち上がれない状態となり、無惨!と聞いていた。
両者精神状態の明暗も想像するまでも無かろう。

今朝は半時間もの時間があり過ぎた。

無言無表情の人    
ふと、あの日の余正麒プロを思い出した。

もう、三年も前のことだが、余先生の師匠・張呂祥六段はこう語っていた。
「高野さん、余さんはきっと出てきますよ。しっかりやっていますから」と。

昨年、大阪医師会の碁会で、たまたま余正麒先生に指導碁を受けた。
「こんにちわに始まって、有り難うございましたに終わる」まで、
私だけが話してる。先生は石と打とうとされているのか
碁の強い先生は表情も無ければ、ひと言も無し。
唖然として、棋譜を採る気も起きなかった。

変な気になっていた。

巧まず 盤外作戦  
彦坂先生は並の打ち手では無い。
序盤のセンスの良さで、リーグ入り棋士といえば、相撲で言えば幕内。
それも、ひと癖二癖もある中堅実力派といえるかな。

碁も将棋も盤外作戦というものがある。
不作為の作為で、巧まずして余ペースに嵌まったか?
思うに、あの無言無表情の前には変な気になってしまったような気がする。


天才宇太郎の
「負けていました」


 
天才宇太郎は感想戦になって、
相手が「こう打てばどうされますか?」と聞かれると
「そう打たれたら負けていました」と言うのが常であったと聞く。

もう感想戦にもならない。

口答えする!
立派な意見でも、目上の人の気に入らないとき、昔は
「ああ言やぁ こう言う・・・口答えするな!」と、たしなめられたものだ。
「それでも」と、ひと言いうと、「また口答えする!」と叱られる。
「依らしむべし、知らしむべからず」が一般であったということだ。

今の世、言わなきゃ損々とばかり、
TPOを度外視して、お互いが言いまくることになっているが、
どう言っても感想戦は責任があって無い。