新人王に圧勝した! 藤井四段29連勝の感動テレビ観戦記 私は将棋はせいぜい初段程度ですが、囲碁に共通した勝負感で興味を以て 丸一日、観戦に釘付けになった。その観戦記である。 高野圭介 記 将棋の14歳最年少棋士、藤井聡太四段は26日、東京都渋谷区の将棋会館で指された 竜王戦決勝トーナメントで増田康宏四段を破り、公式戦の新記録となる29連勝を達成した。 |
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心の動き |
対局はテレビに釘付けで観戦した。戦い済んで振り返ってみると、 いろんなことが思い出されてきた。 解説者も単なる傍観者? 対局者が誰よりも深くヨンでいる。 |
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増田の動き 増田は序盤46手目、敵陣の王将の傍で飛車を制して、自陣は手付かずのまま。 増田はもちろん殆どのプロも藤井の難局を認識していたようだ。 碁で言えば20目ぐらいの差がついていると私も思っていた。 その後しばらくは、増田は勝ちに行く将棋で無く、負けない将棋に方針転換か。 それで充分!アジの悪いところは糊塗する方針のように見えた。 事実、反撃の手掛かりもあるように見えない。 |
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藤井の勝ち筋の動き しかしそれから、49手目、左桂馬を跳ね出したのが反撃の発端。 評者は「傷も残るから怖い手」と評していたが 「三桂あって詰まぬことなし」と桂馬と二枚角の飛び道具が乱舞しはめた。 評者に「アッ」と言わしめた手が57手目の桂取り。60手目の角打ち。 数手出てきた頃である。 「アレッ、分からぬことになってきたぞ」と評者。その頃、 増田には危機感が盤上を覆い始めたのを感じていたに相違ない。 遂に、63手目、敵陣中央の桂打ちが決め手となった。 テレビでは「勝負手」と言っていたが・・・。 「桂の王手は合い駒きかず」ではないが。 73手目の垂れ歩を金で取った一手も圧巻。解説の予想では王で取るであった。 おそらく藤井四段には最後の詰めまでヨミ切りではなかったか。
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形勢判断 |
終始藤井優勢!であったか 振り返って、形勢判断から心の動きをみると、藤井四段にとって、 序盤は悪かったというよりも、成り行きで我慢の局面であったかも知れない。 |
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一般の評は藤井不利の中で、 加藤一二三九段は終始藤井優勢!であったと喝破している。 同じ局面でも棋士の見る眼は決して同一ではないものであるのにオドロキだ。 |
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序でながら、対局中、 藤井四段が相手の背後から盤を見るというゆわゆる「ひふみんアイ」の行動について、 加藤一二三九段は藤井四段を「ひふみんアイ」の継承者とも言っている。 碁では小林光一九段が対局中棋譜を手にしてよく見ていたことは有名。 |
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巧妙な攻め |
大勢の評者も反撃の過程も充分に把握出来ていなかったようだし、 当の増田自身、戦いの最中、優勢と言うだけで守りに回り、決め手の攻撃から眼を外して 攻めるチャンスもなく、遅まきながら、80手目、飛車が成ってはみたものの、 攻めの手は遂に打たずに終わってしまったが。 無気力な戦線離脱ののように見えた。 しかし、これは どうも藤井の余りにも巧妙な攻めに、圧倒された!がほんとうのようだ。 それにしても、普通足がかりもないような局面で突破口の桂馬の一手からの 隠密作戦のような戦線拡大とヨセキリのヨミは驚異に感じた。 藤井四段自身は「途中苦しくなったので、最後はなんとか食いついてという感じでした。 良くなったかどうかは最後の最後までわかりませんでした」と謙虚に話している。 ただ、額面通りかどうかは分からないが。 |
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藤井の棋風 |
藤井四段の棋風 居飛車の本格派で、悪手の少なさに定評がある。得意戦法は角換わり。 現代将棋で主流の玉を堅く囲う戦い方ではなく、 序盤・中盤は攻守のバランスを取りつつ相手の攻めを押さえ込み、 最後は隙を逃さず一手勝ちを読みきるような手厚い将棋を得意とする。 |
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高野秀行六段の評 「『性能の良いマシンが参戦する』と聞いて フェラーリやベンツを想像していたらジェット機が来たという感じ」。 |
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詰め将棋 |
「藤井四段の詰め将棋」のこと。 大記録を達成した藤井四段に対し 兵庫県加古川市出身の久保利明王将は「将棋界を背負う逸材」と称賛する。 大盤解説を務めた公式戦28連勝の対局(21日、大阪)を振り返り、 「安定していてミスがない。 昨年12月のデビュー以降、さらに安定感が増している」と分析する。 印象深いのは2014年の「詰将棋解答選手権チャンピオン戦」。 制限時間90分の筆記試験で、 久保王将らトッププロも頭を抱える難問が並ぶ中、 当時11歳の藤井四段は20分余りで会場から出て行った。 「後方で席を立つ気配がしたので、トイレにでも行ったのかなと思った」。 後に、既に解き終えていたことを知り、驚いた。 藤井四段は同選手権を15年から3連覇中だ。 |
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次は? |
入段13歳が日本チャンピオンと戦う 第30期竜王戦決勝トーナメントで藤井四段があと2局を勝ち抜けば、 久保王将と対局することになる。 新人棋士とタイトルホルダーが公式戦で顔を合わせる機会は珍しいが、 久保王将は「遠い先の話ではなくなってきた」と話した。(溝田幸弘) |