(01)  中国の諺

                                                    高野圭介
 
少ない格言 

現在中国にまかり通る術語も年代とともに移り変わり、
現在の格言が思ったより少なく、
と言うより日本のきめ細やかな格言・諺に驚きの眼を開く。

四角穿芯など   
正確行棋方向、逢断切断、中間開花三十目、有眼殺無眼、は讀んで字のごとくで、
四角穿芯(四隅取られて碁を打つな)は面白い。

術語の面白そうなのをあげると、
愚形の中には空三角(アキサン)団子(ダンゴ)などあるが、
置きの急所、形の急所などは一律にただ〈急所〉だ。



萬劫不応   
小尖(コスミ)長(ノビ)一間跳(一間トビ)大飛(大桂馬)小飛(小桂馬)死活(詰碁)
征子(シチョウ)棋形(碁形)双先手(両先手)転換(フリカワリ)。

うーんと唸るのが鎮(ボーシ)萬劫不応(絶対コウ・天下コウ)などハハーンと頷く。

盤角曲四   
提と吃の使い方が驚嘆に値する。
提(取=書くときのトル)吃(言うときのトル)が原形で、
亀の甲で取っても十目打ち上げても提、派生して反提(ウッテガエ)叫吃(アタリ)又、
双吃(両アタリ) また、比气(攻め合い)隻活(セキ)盤角曲四(隅の曲がり死)。

特に面白いのは
両子頭(二目の頭)千斤曲(千両曲がり)連板(二段バネ)二連板(三段バネ)など。

中国独特の表現では味道(アジ)で、日本のアジに筋道がある。
また、後中先(後手の先手)分投(割打ち)も簡潔でとてもいい。

ミアイ・キアイ

 
アッというのが、接不帰(トントン)送死(モチコミ)倒脱靴(石の下)棋根(要石)などなど。

いっぽう、
日本独自の鶴の巣ごもり、鶴翼の構え、亀の甲、ナマノゾキ、ノビキリ、ヤグラなどは無い。

中国が日本から逆輸入したのが「見合い」と「気合い」で、
見合いは「二者必居其一」と訳されていたという。今は「ミアイ・キアイ」が定着した。

因みに、「石を打つ」は「下積」で、そーっと置くから音を立てない。
中国人には、日本式に、パチリと気合の音を立てて打ちたいと言う人が居た。

言葉の具体性   
 日本に漢字が入り、やがて、
独特の「かな」の発明が生まれ、情緒豊かな日本文化が開花したはずだ。

 日中の近代文化の差は単にイデオロギーの差だけでなく、
言葉の具体性というニュアンスの違いにもあるのではなかろうか。