GO GORS GO !
〜GORS「碁キチ症候群」についての研究報告書〜
2003年6月25日 浜辺 荘
〜前書き〜
私がこの病を研究するきっかけになったのは、
今から数年前篠山で開かれた
碁吉会に参加した事が契機となっている。
重い病を背負った人たちが、
兵庫県の篠山に集まり一体何を始めようと
企んでいるのか興味津々であった。
この頃は囲碁観を発表し参加者の無記名投票により
「碁キチ名人」を選ぶという、健全でささやかな会で
あるように見受けられ、さほど危険性は感じなかったのであるが、
会を重ねる度に全国から新種の恐ろしい
GORS保菌者が集まるようになり、
やがてモンスターのように容を変え、
今や重大な社会問題化するに至った。
私の調査ではここ10年間に、兵庫県を皮切りに
徳島、奈良、愛知、三重、岩手、静岡、
山口、長野、広島、大分、石川、宮城、京都
と各地に乗り込んで大暴れをしたと報告を受けている。
このままほっておいたのでは、日本中がこの危険な病に侵されてしまう。
私は悲壮な決意でこの病と闘う覚悟を決めたのである。
〜発症の地〜
兵庫県宍粟郡山崎町
〜最初の感染者〜
KK氏・男性(プライバシー保護のため、氏名年齢は伏せておきます)
〜感染経路〜
不明であるが、KK氏は以前 呉服商いで全国を
渡り歩いた経歴があり、その間になんらかの原因で
感染発病したものと考えられる。
〜GORS第一期〜
とにかくだれかれお構いなしに碁を打ちたくてしょうがない時期。
棋力向上のため、碁に関する書籍を買いあさり、
プロアマ問わず自分より上手を探しては教えを乞い、
負けると人一倍悔しがる。あちこちの囲碁大会に参加して、
ライバルと実力を競い合う。
総じてこの時期は、碁敵や身内をいたわる余裕がない。
〜GORS第二期〜
がむしゃらな努力の甲斐あって棋力は飛躍的に向上するが、
各棋戦の優勝杯が林立し始めればするほど、
人より強くなった事や勝負にこだわりすぎて、周囲の碁敵に疎んじられる。
本人もその事を自覚し反省を始める。
やがて地元の碁キチと同化を始め、
酒宴と碁会が合体し、囲碁桃源郷が出現してくる。
大体この時期に棋力向上は頭打ちの兆候が見えてくる。
〜GORS第三期〜
再び誰とでも碁が打ちたくなるが、第一期と違って
棋力の上下や勝敗はあまり気にしなくなる。やたら美しいもの、
綺麗なものを見たがり、そういうものに接すると人一倍感動を覚え
時には胸がドキドキすることさえある。
中には早寝早起きで毎朝必ず散歩に出かけ若返り、
少年少女のような身体機能になっていく人も現れる。
風貌さえ若仙人の相が見えてくる。
このような症状が現れるともはや治療不可能である。
〜GORS第四期〜
地球の緯度経度を囲碁マトリックスと心得、
碁キチ症候群の蔓延を夢見始める。
言葉の障害を越えるため、碁キチ症候群を GORS と命名した。
彼は GORSの空気伝染を目論み、自らGORS Spreader と心得て、
時には巡礼行脚にも身を挺する。
世界各地、GORS のまだ無ければなくて開拓せんとし
あったらあってバージョンアップを期してGO GORS GOを旗印に、
遠くはアメリカ、ヨーロッパをはじめ、
ロシア、中国、蒙古、タイ、韓国、ニュ−ジランドなど
近隣諸国にも自ら足繁く通い始める。
間もなく天空の彼方、バオバブの木で碁盤を作り、
星屑を集めて碁石と成したという伝説を信じて、
星の王子様と囲碁交流を持ちたいという妄想に駆られ始める。
〜GORS第五期〜
夜中に目を覚まし棋譜を並べ碁盤とにらめっこしながら
ふと窓の外を見上げると、そこには無数の流れ星が煌きながら、
南の空へ落ちて行く。これはきっと棋聖道策先生が
「神の一手」を私に告げに来たに違いないと信じて
家を飛び出し、流れ星の行く手に歩いていくと、
須磨浦海岸青松の麓で光源氏と道策先生が、
時代を超越して碁を打っているではないか、
目を凝らして盤を見つめるも満月の月明かりは西に傾き、
盤上黒石白石の区別もつかず、呆然とその場に立ち竦む。
やがて東の空から朝日が耿耿と昇り始め、あたりは
いつもと同じ白い砂浜と、穏やかに続く波が一面に広がった。
ふと足元を見ると昨日練習で見失ったゴルフボールが足元に
埋まっているのに気づくや、嬉々として家に持ち帰り、
コンペのスケジュールを練り直す。
直近は病高じて膏肓に入り、「願わくばあの世まで碁器を携える
手段を考案できればノーベル賞ものだ」と、純粋というか高邁というか、
人知を超えた研究に余念がないとの噂を聞いている。
〜治療方法〜
囲碁を連想する様な物をなるべく目の届かないところに
遠ざける事が重要である。
碁盤碁石はもちろん、優勝カップ、盾、賞状等はいち早く片付けること、
囲碁カレンダーや手帳の類等、最近では様々なアクセサリーが
売り出されているので要注意である。
もしお宅の風呂場の床や壁面が四角いタイルで出来ている場合、
湯船につかりながら碁盤を連想しないとも限らないので
思い切ってユニットバスにしてしまうのも一案かもしれない。
念の為にチェック柄のネクタイ、その他の衣類も処分しておこう。
本棚からは囲碁に関するものはすべて取り除き、
古本屋に売ってしまうのが良い。
近所に碁敵が住んでいる場合には申し訳ないが
引っ越してもらうしかない。
「お前の碁は筋が悪いので、一生上達など覚束ない」等と
散々悪口を叩いて、嫌われてしまえば向こうから
退散してくれるだろうし、その程度の悪口は屁とも思わない
骨の有る碁キチが住んでいる場合は
自ら引越しを考えないと仕方がない。
引越し先を紹介しよう。全国津々浦々どこにでも
碁敵になりそうな人がいる可能性があり、
また最近では「ヒカルの碁」とかの影響で、
若年層にも囲碁が普及し始めているらしいので、
少々身の危険が伴うがイラン、イラクの砂漠、北極に近い
アラスカ方面が穴場である。
今すでにGORSの潜伏期間(年単位の)という
とんでもない碁キチもおられるので、
地図帳は持っていかないほうが無難だ。
またインターネットに接続されている方は、ネットによる囲碁対局や
囲碁に関する情報入手が出来ないよう、
プロバイダーに頼んでおくことも忘れてはいけない。
〜後書き〜
現在碁キチ症候群感染者はとても症状が進んで、
碁吉会の旗、碁吉会の歌、等を次々と完成させ、
GORS Spreader は碁吉会の道場も大阪は桃山台を起点に、
チェーン展開を目論み、ホームページを立ち上げ、
全世界向けにエスペラント語にも翻訳して、
GO GORS GO! と、GORSウィルスを発信しようと言う
恐るべき計画が進行中である。
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