渋 装 束

故上杉千郷翁葬送の儀

                                               高野圭介

 

主無き投薬カレンダー紙魚の黒

 
 
はずされた酸素ボンベの夏館


帷子の頬に紅指し寝棺閉ず

 
 
お通夜に真っ赤な眼(マナコ)半夏生
 

祭主なる偲び言葉に梅雨しずく

 
 
冷房に献花の靴音笙の笛


献花するうつむき顔や百合の花

 
 
たかじんの弔電読み上ぐ夏座敷


渋装束夏菊の香うつりけり

 
 
ひと壺の人とはなれり梅雨しぐれ