ワン・チャンスを活かされず。

本田邦久九段 vs  3子 高野圭介


「羚羊掛角」

2012年初春対局 於 関西棋院・囲碁サロン
137手以下略    白中押し勝ち

                                              高野圭介自戦記


 1970年代のプロとの足跡





大阪保健医囲碁大会
(2011年度)の優勝の副賞に本田邦久九段との祈念対局が予定されていた。
私は運良く4連勝で勝てたことで、その恩恵に浴すことになった。
(田村ライターから、4局ブッチギリで、とあったが、なかなか難局でした)

3子局の意味
手合割りについて、この企画、今までの先例があるだろうけれども、
3子局の意味についていろいろ考えた。

天下のアマ中園清三の事情も考慮の一つだった。
このたび、中園清三アマ本因坊が本因坊・山下道吾と対局した。
プロ・アマ本因坊対決である。

過去の歴代本因坊に中園さんの対局の足跡は以下の通り。

1985年 武宮正樹に先5目コミ貰いで、7目勝ち
1987年 武宮正樹に先5目コミ貰いで、中押し勝ち
1990年 趙 治勲に先5目コミ貰いで、中押し負け
1992年 趙 治勲に2子コミなしで、10目半勝ち
1995年 趙 治勲に3子2目半コミ出しで、10目半勝ち
2011年 山下道吾に先番(コミはどうであったか?)黒勝ち

 置き石の数
アマ・プロのトップの手合いが、先から3子まであって、
アマの置き石の数は勝敗に余り意味をなさない。

ましてや、本田九段はNHKの元チャンピオン。
その気になれば、私はどこまで打ち込まれるか分からない。
3子や4子敷いて、碁にされてしまっても不思議で無い。
私は3子局と、腹に決めた。


     

 「医者の車」の轍
本譜は滝口政季九段の解説で、田村 清ライターの筆によって
A46頁にぎっしりと高度な解説を頂いている。
(ここに紹介は不可能ですが)



結局、大敗した。すべては黒12ノビにあった。

白の陽動作戦に乗るか、外すか。下からハネると強い手だが、罠に嵌まりそう。
黒12は白に調子を与えない落ち着いた手だ。」この長考の中身は、
全く緩着で、墓穴を掘ったのが悔やまれるが、乗った船だ,仕方が無い。
局面は「どんどん悪い方へ行く医者の車」の轍の上を辿ることになった。





 碁に活性化
でも、長の道中には、ワン・チャンスがあった。

黒90と2線のマゲオサエが好手で、この手を活かすチャンスが巡ってきていた。

黒110ツギ。これを111ハネなら、白はコウに出来ず、黒は先手で立派なカケツギ。
白は隅で後手活き。しかも左辺を2線にハネて、一気に活性化するところだった。
先手で全部打てるから、本譜とは十数目近い差ということだった。

「死に体の碁に活性化」というカンフルであった。これでも足りないが、
この好機を逸してはもはや争うところは無くなった。




 これが実力だろうな
黒が一貫して厚く(一般には甘く)打ったのは間違いでないと思っている。

でも、このような何もしないでの大敗ぶりは久しぶりですが、
本田先生が何もさせなかったとはいえ、
どなたにも申し訳ないような中身だった。でも、
私は「これが実力だろうな」と甘受している。