決定的形勢判断 一眼半と多眼の問題 ーー棋界が何の不思議も持っていないことに、驚いているーー 高野圭介 |
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第62期本因坊戦七番勝負を高尾紳路本因坊が四勝して防衛した。 三勝一敗の後の、第五戦の第一日目の封じ手黒73の棋譜である。 |
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じーっと見てら、素人判断でも、見えてくることがある。 だんだん分かってきたことは、黒がもう負けないということだった。 |
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この欄は後日談であるが、 週間碁2007年7月9日号に記載の記事 「右辺黒11の打ち込みに、白はサバいて打とうということだった。 黒25までの常形に「黒厚いとされています」と、黄七段の解説があった」 思うに、 これは名人上手の手に、精一杯のご意見であろう。 言いたいことの、何分の一も言っていない。 |
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打ち掛けのその朝のことである。 譜面をご覧下さい。 下辺の黒はどこかで切れそうな気配はあるが、まず、眼だけは安全圏。 右辺、白の二つの石は共に安全圏。 しかし、つぶさに見ると、 上部の8子は1眼と半分。下部の8子は最低4つの眼を持っている。 |
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そもそも眼は2つさえあればいい。3つ4つは持ち過ぎだ。 この欲張っても仕方がないところで、眼が重複しているのに、 無ければいけないところに、まだ1眼と半眼だけ。 このアンバランスは致命傷である。 |
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したがって、これは中の戦いの足枷になっている。 私は岡目八目の立場から、この不条理が白不充分。 つまり、相対的に黒有利という判断をした。 幸か不幸か、当たってしまった。 |
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こんなことになる変化が、平生から定形化されていて、 天下の頂上を極める、命をかけたいくさに出てきて、 何の不思議も持っていなくて、何の論評もないことに 独り驚いている。 注:週間碁2007年7月9日号に記載の記事 |