「これぞプロの眼」

                       高野圭介自戦記

家田隆二八段 vs 高野圭介

二子局
2004年7月1日 於 ランカ
196手完 黒中押し勝ち


 この碁の評は白35から黒52までの変化に集中した。
 プロの目では黒は落第である。
ただし、白35は直ちに黒140からボーシされたら、黒良しだったのに、
黒38が39からのキリを打たなかったのが問題で、・・・と、評は続く。

 紙面には表現出来ないが、「これぞプロ!」と思った。

「高野さんが負けるときは、先手と思って・・・・と、打ったのが、
そのまま泥沼に入ってしまったというときですよ」
「たとえば、黒36はいい手です。
でも、下ハネを期待していた・・と言われるならば、
プロは決してそれは打たない」

 この辺のプロとアマの根本的な違い・・・勝手ヨミ、甘さ、無知・・・を
痛く教えられたのである。

後日談です

棋譜を公表するということは面白いもので、
私は家田先生の指導碁を臆面もなく天下に発表しています。
すると、嬉しいことに、誰彼なくいろんなことを言ってくる。

たとえば、この碁について、

黒46が悪いのではないか?
下辺の白の一団は完全でない。
つまり、
白は手入れをする余裕がないほど切迫した状態で、
黒46で、星横辺りに打ち込めば、決して黒は悪くないのでは・・

・・・観戦の一アマより・・・



 先生の講評はいつもながら、定石の変遷から直近の
認められつつある変化に至るまで懇切丁寧なものである。

 本局でも右下星の一間高バサミ周辺の解説、
別に大ナダレの流行の学習に熱弁を振るわれる。

「こんなことを言えるのも、碁を冷静に・・いいえ、側から見て言えるのですよ。
つまり、碁は岡目八目ですよ」と、
家田先生の弁である。
「打たれた碁のどうのこうの・・というのは易しいけれど、
自分で打っているときは分からないというのが本当でして」とも。
「ポカとか放心の手などはやはり打たされているんです」そして、
「変な手のない碁なんてありませんよ」

 これは先生の棋理に対する真摯な姿勢は頼もしい。
 と話が同時に、先生の人間味ある素晴らしい言葉が漏れ出た。

 碁そのものは黒に残ってしまったが、
こういうこともある、という一局だった。



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