石が牙を剥いてくる

                                  宮垣実自戦記

家田隆二八段 vs 宮垣実

  家研 6子局
    2005年1月3日 於パレスサイドホテル
   37手完 白中押し勝ち

 
 新年を迎えての指導碁で、畏まって打とうとは思ったが、
何の何の、そんな歳ではなかった。心の改まった雰囲気など漂わない。
のびのびと打とうとしたが、逆にこぢじんまりしてしまったのが不思議でならない。

 昔、と言えば大袈裟だが、30年くらい以前に、
安永一さんの囲碁観をお聞きしたことがある。
先生は「誰と打っているのかほとんど意識しません」とおっしゃった。
へーそんなものかいな、と妙なところで感心した。
相手は盤上の石であると考えると、
誰と打とうが関係ないというあたり、
真理のような気がする。


でも、私にとっては実際にはまた別で、家田先生を前にしてはそうはいかない。

 家田先生の指導碁もすでに10回以上になり、
一時は3子でコミ30目も40目もと言い、歯が立たぬからと言って、
また、5子6子でと、お願いしてきた。

 時々負けて貰うけれども、
それは嬉しいどころか、少々不愉快なくらいである。

 今日の碁は新年の打ち初めだから、大事な節目であったが、
見事に大石の活路を潰されて、心ならずも投了のやむなきに至った。
とは言え、これだけこぴっどくやられると、やっぱり気が遠くなりそうである。
と、同時に、
 相手によっては、もの凄く用心して打たねばならないと思った。
石が牙を剥いて攻めてくるから