井山裕太様の第33期名人戦挑戦、励ましの高山行き

                               2008年9月23日



                               天池 三男
                                  (日本棋院各務原支部長)



”天馬空を駆ける”かのように日本の囲碁会で
衝撃的デビューをされた井山裕太八段。



あれから丁度10年の今年、名人戦リーグに入られるや連戦連勝。
遂に「同リーグへ新加入即名人への挑戦権獲得」の新記録を樹立されました。

しかも、
挑戦手合いでは、第1戦・第2戦を連勝。私が夢を見ているのではないか?、
いや、是非現実であって欲しいと 自問自答しているのが現状です。


嬉しい現実に気をよくして、
9月23日午後第3局が行われる「岐阜県高山市」へと出かけました。
時間があるので、久しぶりの高山本線鈍行での一人旅です。

対局者張名人と井山挑戦者・名人戦関係者一行は、
恐らくもう「高山グリーンホテル天領閣」へ到着して対局準備に入っておられるでしょう。
車窓を眺めながら、そんな思いで木曽川から飛騨川沿いの風景を楽しんでおりました。


【思い出】

あれから10年」とは、高野・竹之内両氏が記されている通り、
1998年、因島のシーサイドホテルで開催された「碁吉会因島大会」のこと。

私も、高野会長からの連絡を受け春秋年2回の碁吉大会には殆ど参加していました。

喜び勇んで参加、というより、同大会の幹事を命ぜられていたため、
大会運営がスムーズにいくよう思案しながら、忙しく過ごした2泊3日の因島紀行でした。


その大会には、
可愛い小学生が3~4名いました。
浜辺荘さんのご子息・翔太君、ご息女梓さんらで、
その中の一人が井山少年でありました。

4月12日、会員の各種対局の世話が一段落した時、
「おい、凄い子供が来ているぞ。」
という言葉が耳に入りました。
「どういう子?」と尋ねると、
「7段連中がみんなやられた。」とのこと。

この「みんな」は、
驚きのあまりの誇張だったのでしょうが、
それにしてもこのまま聞き捨てには出来ません。

何故って? 実は、私は元教師でした。
小学生チャンピオンなら、なおさら対局しなければ。
子供に負けてはおられないぞ」という
自負があったからです。




私の宝・井山少年との棋譜



互先 天池三男 vs 先番 井山裕太(9才)
           コミ 黒5.5目出し

                記録 有我和男

1998年4月12日 於 因島・シーサイドホテル

196手以下略  白2.5目勝ち


席上、幸運にも、
アマチュアとしての
井山少年と
対局出来たことは、
もっとも嬉しい
出来事であります。


早速裕太少年に対局を申し込み、快諾を得ました。

ニギリで私の白番。

10年前のことなので薄れた記憶を辿るのですが、
子供とは思えぬ技に長けた子でありました。
① 決断が早い
② 着手に変化が多い。

小学2~3年でこんな発想が
出来ることに大変驚きました。
途中得をしたり損したりでしたが、
最後は、白番2目半勝ち、
一応対面を保つことが出来ました。



挑戦者 元 裕太少年



なお、夕食時素晴らしい出来事がありました。
裕太少年の「プロ宣言」であります。

私が司会をして宴を取り持っていたところへ、
少年の祖父鉄文氏から、
「裕太が、皆さんにお話ししたいことがあるというから、
マイクをお願いできますか。」と申し出でがありました。

「はい、どうぞどうぞ!」と、マイクを向けると、
ばくは、井山裕太です。ぼくは、プロになりたいので、
一生懸命頑張りますから、皆さん、応援してください。
」と、
はっきりした口調で話されました。



一同は、突然の裕太君のプロ宣言でしたが、
「やあ、凄い。頑張れよ。」
「あんたなら出来る。応援しているよ。」
等々口々に激励の言葉と、凄い拍手で盛り上がりました。



有言実行!


プロ棋士になるどころか、
日本囲碁会のトッププロにまで成長され、
今、正に名人位を奪取直前の井山裕太八段が、すぐ傍て、
囲碁の神髄をわれわれ愛棋家に示してくれるのです。


今日・明日の第3戦は凄い熱気の中、目前で展開中。

一手一手に、手に汗を握る緊迫した応酬です。

しかし、
何かこの碁は、
第1・第2局とは打って変わり、
着手が踊っていたように思いました。

折角高山まで出かけて井山さんを激励したのに、
とてもとても残念でした。

絶大なる応援を
とは言え、なお2勝1敗とリードしているのです

第4局は、踊ることなく冷静さを取り戻して、
黒番の名局を打ち切ってください。

いや、きっとそうなるでしょう。
井山裕太新名人の誕生の一日も
早からんことを確信しております。


今後とも、各務原から先生のご健闘を祈ると共に、
更なるビッグタイトルホールダーとなられるよう
応援して参ります。






井山裕太様へ、第33期名人戦挑戦励ましの手紙(Ⅰ)

                               2008年7月29日

                               天池 三男
                                  (日本棋院各務原支部長)


大和証券杯
ネット囲碁


井山裕太様

 今回は、あなたが、「大和証券杯ネット囲碁」を獲得されました。

とりわけ
日本の囲碁会で日の出の勢いを示しておられる張栩名人
対戦相手でありましたのに、見事勝利されました。


歴代優勝者と決勝戦 (左が優勝者)

2006年         高尾紳路 - 張栩
2007年上期     王銘琬 - 依田紀基
2007年下期    高尾紳路 - 井山裕太

名人挑戦者
更に、「名人戦リーグ」において、
抜群の成績で見事「名人挑戦者になられた」ニュースに接した
嬉しさに、ペンを取りました。
(注:前に手紙を差し上げてから、3年になります)

第33期名人戦挑戦者決定・誠におめでとうございます。

挑戦者
決勝戦に
深く感動



 わたしは、パソコンで観戦しておりましたが、
あなたの力強い打ち方に、
これぞ囲碁の神髄と深い感動を得ることが出来ました。
中盤を過ぎる頃には勝勢を築かれ、余裕をもって勝利されましたね。

常々あなたのパソコン碁はいつも見ており、
プリントして研究の資料にしておりますが、
中でも、この決勝戦には、深く感動いたしました。
ありがとうございました。そして、おめでとうございました。






井山裕太様へ、第33期名人戦挑戦励ましの手紙(Ⅱ)

                                                       天池三男


高山市の
第3局
前夜祭


張名人との七番勝負も、
この調子であなたらしい碁を打って勝利されますよう願っております。

第3局が岐阜県の北部にある小京都「高山市」で行われますので、
あなたを応援したく、前夜祭から当地へ出かける予定でおります。

棋聖戦も
更に、棋聖戦でもリーグ入りしておられますので、
こちらもついでに手にしてください。吉報をお待ちしています。


各務原支部


会員の育成


現在、私は、
各務原市(岐阜市のすぐ東隣)に「
日本棋院各務原支部」を設立し、
支部長としてその運営に精を出しております。(会員は約90名)
中部総本部より全面的に支援いただいております。


私は、会員の育成に忙しくしておるとこいろですが、
会員の棋力も次第に向上して参りました。

今年の6月15日の岐阜県の岐阜県アマ囲碁本因坊戦では、
当会員の二名が決勝戦を行うという予想以上の好結果となりました。

 優勝した小林 悟君(名古屋大学二年生・20才)は、
中学生の頃
私が講師で行った囲碁講座(市教委主催)に
初めて参加した子でした。

 高二(1級)から各務原支部会員となりましたので、
いろいろ指導したのですが、
急速に上達し、今日の栄冠を射止めたのです。