井山の敵前大転回

第5局 第1日目打ち掛けまでの観戦


ガラリと棋風を変えて、決死の覚悟が見える。
井山が少年の時、村上文祥に教えを受け、
ひと晩で、新機軸を打ち出したことがある。



第5局は、背水の陣を敷き、
自分の碁をシノギの碁に180度切り替えて、
新鮮な棋風で臨んだ。その、気概を讃える!



                                             高野圭介記


コペルニクス的
転回の棋風


第一日目打ち掛けまでの、井山の碁を見て、
驚いたのは私だけではあるまい。

第4局の反省から、
コペルニクス的転回の棋風を打ち出した。

第4局は井山自身、碁になったと自負したのに、結果は出なかった。

出なかったと言うより、彼自身の反省は
甘さだけが残ったのではないか?


ヨミ比べの
力戦に変身


心から井山頑張れ!と旗を振っている私は
高尾、井山を厚い碁の最右翼と思っていたものを。

それが大事な大事な名人戦の真っ最中に。

一転して、かって無かった棋風の世界、
山下顔負けのヨミ比べの力戦に変身したのだから。


文祥マジックを
打ち破った



第1日目が終わった。

私がハッと気が付いたのは、今から10年前、
村上文祥に三子で立ち向かった井山少年のことだった。
阪本清士朋友の証言に依るところの事実だった。

前日の第一局は3子で文祥マジックに届かなかったのに、
本番の公開対局・第2局は大転回の棋風で、
文祥マジックを打ち破ったという事実。


今から10年前。
井山少年9歳の時


今日の
井山裕太さんの
原点を見た




阪本清士証言


実は前日のこと、

村上文祥 井山裕太の前哨戦を行いました。
そのとき、手合いは3子で文祥さんにお願いしました。

内心は,文祥さんは下手打ちはプロ以上の実力者だけに,
裕太さんが前半で潰されないかと
一手一手を祈るように観戦したのは,私にとっては
初めての経験であり胃が少し変になったものです。



結果はやはり届きませんでしたが,
次回に期待が持てるところもありました。

局後,手応えから,文祥さん
「10歳前後は,自分の経験から一局ごとに,
極端なときは一手ごとに,自分が強くなっていくのを
実感するときがある」
と言っておられました。

おそらくは
翌日の結果を予見されていたのかも知れません。

ここに
村上文祥対井山裕太戦公開対局実現しました。

翌日の二局目は
参加の碁きち会会員,因島の方々の固唾を飲むなか

黒は一歩も引かない前向きな着手に
一晩でガラリと変わり圧勝しました。


このときに
今日の井山裕太さんの原点を見た気がします。



Z旗を掲げ、東郷ターン

天気晴朗なれども波高し
日本海海戦でウルトラCと言われた空前の大作戦!
T字作戦を取り、敵前大転回にも似て、

私は「
きっと快勝に繋がる!」と、
興味津々で気が高ぶっている。


溝上知親八段の

解説


 序盤は黒が厚みを意識して打ち進め、
白が右上で地を稼いだことから、
名人の模様と挑戦者の実利という、
第4局までとは逆の展開になった。

 上辺白46の消しからは読み比べ。

黒55、白56、黒57が両者一歩も引かない攻防で、
一気に険しくなった。

黒63までで上辺白が孤立。勢力圏で猛攻をかける名人と
、黒の包囲網の中でさばきながら、白66で反撃に出た挑戦者が
真っ向勝負に出ている。


 解説の溝上知親八段は「名人が最も激しい攻めを選び、
勝負が決しかねない大変な局面を迎えています」と話した。
(伊藤衆生)