井山少年と因島 浜辺 荘 |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
|
|||||||
碁吉会 | 今からちょうど10年ほど前、 碁吉会が東西の精鋭を引き連れて 広島県因島に乗り込んだことがあった。 |
||||||
秀策の逸話 |
|
||||||
碁ランティア |
|
||||||
村上文祥氏 | 碁吉会一行が、因島のホテルに到着すると、 オールドファンには懐かしい 故村上文祥氏が出迎えに来てくれていた。 |
||||||
祖父・鐵文氏 | 当時井山少年は9才であったが、 祖父の鐵文氏に連れられて 大阪から因島での大会に参加しており、 確か7段格であったと思う。 そしてこの祖父こそ 少年に囲碁の手ほどきをした人であり、 碁吉会の発行した書物「醍醐味」にも その辺りの経緯を書いておられる。 |
||||||
プロを目指す | 小学生名人2連覇を果たした少年は、 碁吉会恒例の夜の宴会での自己紹介の場で、 「プロを目指す」と決意していた。 これは彼の才能は周囲を 充分納得させるものであったと思う。 |
||||||
小さい巨人 | 大会2日目のメインイベント。 村上文祥氏との記念対局(3子局)が催されたが、 大柄な村上氏に相対する少年は、 ホテルが用意した座布団を重ねても、 盤の向こう側に手が届くかどうか危うい程の 背丈だったのである。 |
||||||
石を置く役割 | 会場には解説用の大盤が用意され、 私は2人の碁を真下に見ながら、 大盤に石を置いていく役割を頂いた。 村上氏は序盤から奇手、鬼手を放って 若干9才の井山少年に襲いかかるが、 少年は見事に受けきって局面は進む。 その度に会場からは「オー」「ヘエー」と 感嘆ともため息とも取れる歓声が上がった。 |
||||||
潰しにかかる | 私は村上氏が本気で少年を潰しにかかっているな、 と感じ2人の真剣勝負を目の当りにして 鳥肌が立ったことを今でも思い出す。 |
||||||
ありません | あらかた戦いは済んで大寄せに入ろうとする時、 村上氏は盤全体に目をやって、 あげハマを2つ3つ、つまんで盤上に置き、 「ありません」と頭を下げた。 |
||||||
万雷の拍手 | 勝負の鬼に徹した村上氏はこの時、 満面の笑顔で少年の健闘を称えたのである。 1手目から終局まで一度も解説する事無く、 それでいて、物音一つせき払いもはばかれる 会場の緊張した雰囲気は、 私の唯一の解説 「井山7段の中押勝がちとなりました」の一言で 一気に和らぎ、会場はいっぱいに詰めかけた 碁きちの割れんばかりの拍手に包まれたのである。 |
||||||
井山少年に 2タテを喰う |
|
||||||
少年 置き碁の 3面打ちを こなす |
少年の才能を感じた出来事は他にもある。 夕食後私が置き碁の3面打ちをしていると、 すぐそばで少年がじっと盤面を 注視しているのに気付いた。 私が「代わりに打ってもらえないかな」 と持ちかけると、こっくり頷いて 立ったままあっちこっちと盤を往復して 打ちはじめたのには驚いた。 |
||||||
|
|||||||
|
|||||||
アマチュアの 棋戦で打つ |
因島での対局の翌年、 少年が10才の時アマチュアの棋戦で 顔を合わせる事があった。 私は この機会を逃しては一生勝つことは 覚束ないであろうと覚悟を決めて 挑んだのであるが・・・、 チャレンジャー精神が功を奏して、 何とか勝利を収めることが出来た。 |
||||||
ほとんど ノータイム |
勝つには勝ったが私は ヘトヘトに疲れてしまった。 何せ私は1時間の持ち時間を使いきり、 秒を読まれていたのに対して、 少年の所要時間はたったの10分であり ほとんどノータイムで打ち進めていたのである。 |
||||||
完璧に 負かされた |
そしてこの翌年 もう一度打つチャンスが訪れたが、 今度は完璧に負かされ、 もう私の手の届くところにいないことを 思い知らされるのである。 |
井山少年アマ時代の打ち碁 |
|||
---|---|---|---|
1998-07-05 | 久代俊明 vs 2子 井山裕太 |
不詳 | 碁ネット記念対局 |
1998-08-25 | 白 浜辺荘 vs 先番 井山裕太 黒5.5目コミ出し |
白14.5目勝ち | 碁ネット本場所 |
1999-04-19 | 白 井山裕太 vs 先番 浜辺荘 黒5.5目コミ出し |
黒105目勝ち | 碁ネット本場所 |
1999-12-xx | 白 井山裕太 vs 先番 浜辺 荘 |
不詳 | 不詳 |
棋譜の自戦解説 白 井山裕太 vs 先番 浜辺荘 黒5.5目コミ出し 浜辺 荘 |
|
---|---|
スピードと 戦い |
1998〜9年頃の井山少年は、 まだ経験不足による弱点があった。 部分的な読みでは及ばないが、 全局的なスピードと 戦いに持ち込むことによって 勝機を見出す作戦であった。 |
井山少年 全局的な スピード作戦 |
序盤黒11の三3に、 白12とかけたのは気合いではあるが、 ここは右辺黒5の下(16の十一)にツケて 変化していく所だろう。 黒45とボウシして黒47とハサみ、 黒55とカカる等、 全局的なスピード作戦は成功している。 |
一戦を 通じて 味わった ことの 無いような 経験 |
左上隅定石進行後、 黒93から白をカラミに持って行き、 黒97と戻ったのが自慢の手で、 後は白をいじめながら確実に 勝利していく予定であった。 しかし この時点で黒の私は持ち時間を 使い果たし秒読みである。 |
|
|
|
|
石井邦夫 九段の 解説 |
|