「憎めず、されど憎憎しい碁敵の所作」 十題



                                              浜辺 荘

1.
太らせ、泳がせ、安心させておいて殺傷し
「なかなかてこずったわ」と満面の笑みで云う輩。

2.  
恐れている局面にさしかかるや、背筋をピンと伸ばし、
ギョロッと睨みつけて、恐怖心をあおる輩。

3.  
必死で抵抗していると「カモがねぎを咥えてやってきたと思ったら、
猟師にはむかいやがる」とのたまう輩。

4.  
形勢が思わしくなくなると「高い山から♪谷底見ればね♪瓜や茄子の花盛り
あれわいどんどんどん♪」等と歌いだし、戦意をそぐ輩。

5.
マッタをしておきながら「これはマッタではない!剥がした手もいい手だが、
もっといい手が見つかったので見てもらう為だ」と言い訳する輩。

6.  
碁に負けて、悔しがっていると、ほくそ笑みながら「碁は勝ったり負けたりだから、
そういう時もありますよ」と慰めじみたことを云う輩。よけいに頭に血が昇る!!

7.  
知っているくせに「これは見たことがない手だ」等と言って、
困った振りをして油断させる輩。

8.  
細かい碁で、気持の悪いところに意味ありげにダメを詰め、
無駄な手入れを強要しようとする輩。

9.  
地が足りない事がはっきりすると、やたらとんでもないコウを作り、間違えるのを待っている輩。
相手の嫌らしい意図がわかると、イライラして集中力を欠き、本当に間違えてしまう!!

10.  
「私は手加減しませんから」と対局前に言っておきながら、
自分が負けると「ちょっと遠慮しすぎたかな」と負け惜しみを言う輩。