馥郁とした「俳句の会」

兼題 「梅」

      2017年2月23日(木)交友プラニングセンター

                                          高野圭介



 俳句。この世界でも稀に見る最短詩。捨て去る醍醐味を味わえる粋な場だ。
不要なものを極限まで棄てて、エッセンスだけで全てを表現しようとする。
それは囲碁幽玄の世界と共通である。

 10年ぶりの私のつたない俳句。哀しいかな、回りものを捨て去ったとき、
肝心のものも無くなっていた。全然冴えていない。嗚呼。

選句も出来ていない。俳句を見る眼が妖しい。
初心に返れでもなかろうに、我ながら失笑した。





    兼題は「梅」。二句投句した。

 俳句は足で詠むのに、結局記憶に傾注してしまった。
 かって、綾部山の梅林にはいくら足を運んだことか。あのことこのことが甦ってきた。

碁たけなわ梅一片のこぼれけり

 梅林で盤を囲んで囲碁三昧の時、ひとひらの花びらが盤の上にこぼれてきた。
そっとそれを除けて・・・風情のある一瞬だった。

 これは初参加の私へのご祝儀も加わってか、四点句の第二席だった。
その時の質問は「一片」は「イッペン」ですか、「ひとひら」ですか?でした。
そう言われてなるほど、イッペンに句が良くなった。

       碁たけなわ梅ひとひらのこぼれけり  圭介




二句目

売店で注文した梅うどんに梅の花びらが二.三枚お椀に浮いていた。
何だろうと怪訝に思ったとき、梅林を丸めて食せよとのご宣託と知った。

梅林を椀に沈めて梅うどん

 これはどなたかの一点を戴いただけ。つまり自慰行為で、他に誰も意味が分からなかったわけだ。
おお、表現が悪い。推敲が足りなかったと反省した。次のように訂正しよう。

         梅林と見立て花びら梅うどん     圭介





 投句22句中、互選句は以下の通りです。

 第一席 5点句       碧い日の友禅映ゆる京の梅      吾李

 第二席 4点句       碁たけなわ梅一片のこぼれけり    圭介

 第三席 3点句       梅三分きのふに勝る日の光      敏恵
 
 第三席 3点句       一輪の寒梅笑う朝稽古         吾李

 本句会は素朴な俳人集団で、作句も初心なら、選句も同様。俳句を楽しむ会。
したがって、選句に漏れても入ってもたいした問題では無いと思う。

秀句が漏れていた。その二句。

      2点句       梅東風や姉の電話の郷訛り            敏恵

      1点句       梅林へ日差しやわらか龍眠る(臥龍丘)      悦子


「やさしい俳句」大林悦子講師が命名されたのも頷ける。

なお、司会進行の沼田敏恵女史は俳壇にも句会にも通じていて貴重な存在だ。

全体の進行は「句会慣れしていない」方もあり、全体として
何となく、スムースな進行とは言えないようだ。・・・すぐ慣れるだろうが。





合理的な句会の持ち方

 本句会の進行は古色蒼然ともいうべき古来からの正式な句会の持ち方だった。
恰もお茶席のお手前と同様の理念である。
なるほどこれなら、吟行の句会でもどこでも問題なく通用する。完璧だ。

 かって、お茶の先生のお言葉を思い出した。
「お手前は無駄な動きのようだが、合理的に出来上がっています。途中どれを省いても後が続かない。
そしてお茶はいよいよ「渇を癒やす」だけのものです。と。

 本会の句会の流れは馥郁とした時間が流れた。選句まで40分もかかっている。
全時間の3分の1。 コピーするなどして簡略にすれば10分もかからないというものを。
私はこの無駄とも思える悠々とした時の流れを流石と心して甘受していた。