美濃部「天皇機関説」
高野圭介 |
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天皇機関説 天皇機関説とは、大日本帝国憲法下で確立された憲法学説で、統治権は法人たる国家にあり、 天皇はその最高機関として、内閣をはじめとする他の機関からの輔弼を得ながら 統治権を行使すると説いたものである。 ドイツの公法学者ゲオルク・イェリネックに代表される国家法人説に基づき、 憲法学者・美濃部達吉らが主張した学説で、天皇主権説(穂積八束・上杉慎吉らが主張)などと対立する。 |
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国家主権説と君主主権説 「主権」という語は多義的に解釈できるため注意が必要である。 国民主権説は「統治権としての主権を有するのは何か」という問いに対して、 「国民である」と答えるのある。 君主主権説は「国家意思の最高決定権としての主権を有するのは何か」という 問いに対して、「君主である」と答えるのである。 美濃部達吉の天皇機関説は、 統治権の意味では国家主権、国家意思最高決定権の意味では 君主主権(天皇主権)を唱えるものである。 美濃部は主権概念について統治権の所有者という意味と 国家の最高機関の地位としての意味を混同しないように しなければならないと説いていた(美濃部達吉『憲法講話』)。 金森徳次郎によれば 美濃部は、天皇の発した勅語であっても主権者たる国民はこれを批判しうるとしていた。 |
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「学匪」と非難 美濃部は都合のよい学説を唱えて,「皇国の国体を破壊する」ももで、 社会に悪影響を与えるというような「学匪」であると非難の的となった。 |