「井原詰碁」の粋

                                          高野圭介

 

「井原詰碁」の粋

                 高野圭介

 星の王子さまがバオバブの木から碁盤を造り、天空の星をちりばめて碁石を造った。
この夢物語は今なお私の頭の片隅に棲み着いている。

 井原さんは星の王子さまよろしく盤上に散り撒かれた碁石から詰め碁を作り、
その問題は次々届くが、解答は記入されていない。それが212個の詰碁に凝縮されている。

 たまに「おもしろき筋有り」などのメモが着く程度。だから、受け取る当方も四苦八苦。
それにしても、よくもまあ削ぎ落とされた僅かな石でこんなおもしろい詰碁が陸続として
創生されるものかはと、いつもながらに感嘆する。




 井原さんの詰碁は粋でおもしろい。
数多の中で一つを例にとってみよう。解答に二案を考えた。

 第1図 正解とした図で、第一感だった。




 第2図 白が母屋を捨てて,中へ出ようというものである。
オサエておいても別の変化になるが、やはりコウ。




 第3図 簡明に2の2に取り切ったとき、外に出られてはダメとしたものである。
外の具合で何が待っているか知れたものでは無い。これが詰碁の常識である。
 しかし、本図においては母屋が終わっている。嗚呼、何としよう。

正解が紛らわしいのである。




 普通、碁に浸り込んでいる人ならともかくも、人一倍の働き者。
日中、碁盤は手の前には無くて、
詰碁の時だけ頭の中に表れると言うことをお伝えしておきたい。
天才の天才たる所以のものである。