賤丈夫となるなかれ

緒方洪庵先生のこと

                                           高野圭介


 1858年にペリー艦隊が長崎に寄港し、コレラを汚染させた。
たちまち全日本が三年間に亘り流行した。
因みにこれが尊皇攘夷の大義名分をなったと言われるのだが。

 そのとき、天然痘に貢献した洪庵は弟子達に
「事に及んで賤丈夫となるなかれ」と鼓舞した。



 感染爆発時に、医者は最前線に立たされます。
医師法19条に「正当な事由なしに診療拒否は出来ない」とあるが、
火事の時に、真っ先に消防車が出動するのと同じです。

弟子達は往診に奔走。
洪庵の元に「誰それが討ち死にした」と、報告が届いたという。

 

緒方洪庵のこと




 緒方洪庵は
江戸時代後期の武士(足守藩士)、医師、蘭学者である。

大坂・船場に適塾(大阪大学の前身)を開き、人材を育てた。
天然痘治療に貢献し、日本の近代医学の祖といわれる。
適塾は適々塾とも称される。
緒方洪庵の号である「適々斎」が名の由来である。

適塾から福澤諭吉、大鳥圭介、橋本左内、大村益次郎、
長与専斎、佐野常民、高松凌雲など幕末から
明治維新にかけて活躍した多くの人材を輩出したことである。


 
 この実話に、私が感動したのは「賤丈夫となるなかれ」の一言です。

 そもそも「丈夫」は、中国の言葉に由来し、
人間の身体が壮健であり、また身体の一部がしっかりしているさま、
更には精神面でも気丈で気強い意味も含む場合が多いが、
「美丈夫」「偉丈夫」など、大いなる「益荒男(ますらお)」=丈夫という意味は
今ではほとんど薄れていますが、
「丈夫」に「立派な男」って意味は残っています。

 
 それが応用として物体など無生物に対しても使われる場合には
単に頑丈な意味にも転用されます。

「大丈夫」の場合は「だいじょうふ」としての単に「だいじょうぶ」という発音で
形容動詞あるいは副詞的に使われ「危なげない」
「間違いない」といった意味に変容されています。

物に使う場合は、壊れにくいという意味です。
硬い・堅い・固いっていう意味もあります。



 さて、小丈夫は小柄な男。器量の狭い人物。小人物の意。

賤丈夫は身分のいやしい男。賤夫。また、欲ふかい男。
性情のいやしい男。おこないの卑しい男。


 
2020年現在、新型コレラ騒動の最中、
近隣の接骨院が突如閉鎖しました。


院長に叱られて女性従業員が次々辞めていたそうです。
噂では、客足も遠のき、閑古鳥と孤独。何と言うことでしょう。
閉鎖の前に、二人居た女性従業員が辞めました。



院長は弁を閉ざしていますが、人の口には戸を立てられません。
保健の医療請求を水増ししていたという流言が秘かに流れています。
遂に、閉鎖!


火のないところに煙は立たぬ       知らぬが仏

 品性哀し  身から出た錆   貧鈍も後悔先に立たず

 無念残念   ただ消え去るのみ   嗚呼、賤丈夫!

 
もう二年も前、1月19日(金)朝のことです。
私は接骨院へ行きました。
今日もいつもの近藤先生のお世話になって、
いろんな話が楽しいなぁと、その積もりでした。

近藤優也師は接骨院での担当の師です。若いが話題も豊富で、
何よりも治療に真剣味がある。信頼出来る師なのです。
先だっても、「腰痛には体幹・背筋・腹筋の三つが基本です。
身体を、各関節を柔らかくさせること。例えば、アキレス腱・・・」と。
私はこの師の指示を忠実に実行しています。嬉しいことです。

ところが、何の弾みか、今日は院長が治療を始めました。
私はいつものように言いました。
「ジムで筋トレをやっていますが、筋トレで筋肉が張っても、
何もしないで張ったというのは、触っただけでも違いが分かるのでしょうね。」

問うた途端に院長は気色ばんできました。

「筋トレなんで半年も経たないと効果は出ません」
「私に筋トレで張ったのを揉み出せというのですか!」と、
皆に聞こえるように故意にか、大声でわめき立てます。

大勢の客の中でがなり立てる。 困ったものです。
何か院長は勘違いしているとは思いましたが
「勝手に好きなこと、言うとれ!」と黙って切り捨てました。

私は筋トレに精を出しかけてもう何年にもなります。
院長の言う年月はとっくに経っています。

今にして思えば、会話をしたのが大間違い。
これほど間抜けの人間と思わなかったのが残念。
何も言わなければ何も起きなかったものを。
このまま黙っているつもりだが、どうなるか。

それっきり、私は縁を切りましたが、人づてに、
快男子・近藤先生は間もなく辞めたとのこと。

嗚呼、賤丈夫!