水に散り敷いた落花が連なって筏のように見えるところから、近年、「花筏」を
「花」という季題の傍題として好んで用いられるようになっている。 とはいえ
「花筏」は季題としては採用されていないところもあって、未熟な季題とも言えよう。
そもそも季題というものは「万緑」という季題の示す如く、優れた例句によって、
その情感が醸成されていくものであって、一つの生命体のようなものと理解している。
この句は、落花が散り敷き筏のように連なって密集しているさまを
「いきどころなくたむろしている」と詠嘆したものである。
その押し犇めく圧迫感から都会に生きる人間の息苦しさのようなものまで
感じさせる力がある。そのような現代感覚で、「花筏」という新季題を捉えた
良き一例として、ここに特撰として取り上げた次第である。
中杉隆世 記
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