丹田に納めて

                                   高野圭介

全身の放松
友人の医者から聞いた。
「心筋梗塞の治療をした予後の運動に太極拳が良いんですって」。
たちまちに筋肉のリハビリをしなさいでもなかろう。

むしろ身体全体のリラックスと呼吸を整えるのが健康にいいということなのか。
と言っても、最初から腹式呼吸が簡単に出来るものではない。
自然呼吸でも充分だから全身の放松(ファンソン)をと言っているのかも。

丹田に納める
佐藤靖子先生から平素から指導を受けている。
「手を前に出すとき身体が緩み、すーと息を吐くんです。そして決める」 そして
「気を丹田に納める」と。

この丹田が肝心で、かって勝海舟が西郷隆盛と江戸城の無血開城の談判にのり込んだとき、
胆力を丹田に鎮めて行ったと述懐している。

太極拳の表演で緊張しすぎて失敗することがある。
丹田を意識するのが良いようだ。

息継ぎ
不思議なことに息を吸うときの早さは一瞬だ。
鯨の息継ぎも海面へ躍り出たあっと言う間だが、
人間のクロールの息継ぎも吸うときはパッと一息で済む。

複式呼吸
ところが太極拳は違う。ゆっくり吐いてゆっくり吸う。
しかも同じスピードで。
息継ぎはすーと息を吐ききることによって丹田からの複式呼吸がいい。
新鮮な空気が胸いっぱいに入ってくる。

せっかく毎朝の太極拳だ。
この新陳代謝に、どっしりと大地を踏みしめる意念をもってやろう。

ふるいもの
ふるいもの を 出さなければ
あたらしいもの は 入らない
                                みつを