結城・坂井両天才少年・思い出の棋譜 (月刊碁学1986年3月号記載) 高野圭介 |
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勢いは勢いを呼ぶ | 人の世には勢いというものがある。 沈静化した閉塞状態はどこかで、何かのきっかけがなくては そのままで終わってしまう。 時至り、導火線に火が付いたらもう手に負えないと言う勢いだ。 勢いは勢いを呼ぶ。 |
時の人、坂井秀至 | 時の人、坂井秀至がそれだ。 小学生名人、中学生名人、高校選手権者、アマ本因坊、世界アマ選手権者と あらゆるものをなぎ倒すかのように、トップの座を手中に収めた。 会うたびに生の呻きを聞いた。 「私たちの世界では、最後の1目2目が問題なのです。それがなかなか抜けない」と。 それが抜けきった。 |
結城聡にチャンスが | その問題を克服し、碁聖の座を射止めるや、 またまた兄弟子・結城聡にチャンスが巡ってきた。 「結城聡、天元戦決戦に名乗り」である。 受けて立つ山下敬吾天元は言う。 「最近、大坂の勢いが凄いので、飲み込まれないよう気をつけねば・・云々」と。 |
結城天元の実現を | 早碁に賭けたら棋界ナンバー・ワン結城聡は関西棋院の顔である。 弟弟子に先を越されて、持ち前の負けん気に火が付いた。 今まで何回もあったチャンスに、ここ一番と言うときに、不思議なように力が抜けた。 彼自身振り返って「打ちてし止まん」の気概の欠如であったと、自戒されているはずで、 もはや単に技術のことではなくて、 ほんとうの勢いを身につけることだと決心されているに相違ない。 時は今、結城天元の実現を待とう。 |
天才少年同士・思い出の棋譜 白 最年少プロ三段 結城 聡 vs 定先 小学生名人 坂井秀至 於 佐藤直男教室 1986年冬 119手完 黒中押し勝ち |
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佐藤直男講評 | 本局で見る限り、坂井は調子に乗りすぎている部分もあるし、結城は歯がゆい。 ただ、天才結城の碁はこんなものではない。 白34トビツケで、中からボーシしておれば、 本局、一気に天才の碁が開花していたかも知れない。 遡って、黒33は一路深すぎた感があって、1or 2路控えるところ。 ボーシで咎められたら、好調の波に水を差したかも知れない。 両者、後からのミスが致命傷になったと。 このポイントが明暗を分けた。 |
三木正の記述 | 「天才は凡才と同じことをやっていたのではいけない。 凡才の何倍もの努力をして、 天から与えられたものを発揮し尽くす義務がある。」 「こういう講釈を聞いたらこの二人は遠い無縁の話だと思うに違いない。 碁についても、碁の才能の限界に悩むことがあり、 これから人生のさまざまなことに苦しむ年齢である。 幸い家庭にも師匠(佐藤直男九段)にも恵まれている。 大成を期したい。」 |