薪能・幽玄の世界に遊ぶ

神戸市長田神社 納涼薪能



                            高野圭介

 
2014年8月1日 恒例の長田神社・薪能に招かれた。
忽然と現れる幽玄の世界にしばしの納涼の夕べであった。

平成4年・百万・・・平成5年・土蜘蛛・・・平成14年・葵上・・そして、今回・鞍馬天狗

毎年観能していると思っていたが、こんなに飛び飛びとは知らなかった。




 
狂言・鬼瓦  あらすじ


訴訟のため3年近くも都暮らしをしていた大名は、訴えが勝訴となり新たな領地を得た上に
国元への帰参が許されたことから、太郎冠者を引き連れて日頃から参拝していた
因幡堂の薬師如来に御礼参りに訪れる。

帰国したら御堂を建てて薬師如来を祀ろうと話しながら因幡堂の造りなどを見て回る主従であったが、
破風の上にある鬼瓦を見た大名は突然泣き出した。



冠者が驚いて理由を尋ねると大名は「鬼瓦の顔を見て故郷で待つ妻の顔を思い出した」と語る。
「鬼瓦の団栗眼や団子鼻、口の大きな様が妻に生き写し」などと語りながらなおも泣く主であったが、
「目出度い旅立ちに涙は不要」という冠者の言葉に大名は機嫌を直して、主従は大笑いする。

 



能・鞍馬天狗 あらすじ


春の鞍馬山、僧(ワキ)が大勢の稚児を連れて花見にやってくるが、
その席に怪しい山伏(前ジテ)が上がりこんでくる。

山伏の不作法な振る舞いに、僧は憤慨する能力(アイ)をなだめつつも、
花見は延期として稚児たちとともに去ってしまう。山伏は人々の心の狭さを嘆くが、
しかし稚児の一人である牛若丸(子方)だけはその場に残っており、山伏と親しく語り合う。
牛若丸の境遇に同情した山伏は、ともに桜の名所を巡り廻り、
最後に自身が鞍馬山の大天狗であることを明かして姿を消す。



翌日、約束通り鉢巻・薙刀を携えて牛若丸が待ち受けていると、
各地の天狗たちを引き連れた大天狗が登場する。
牛若丸の自分を想う心のいじらしさに感じ入った大天狗は、黄石公と張良の逸話を語り聞かせた後、
兵法の奥義を牛若丸に相伝する。袖を取って別れを惜しむ牛若丸に、
戦場での守護を約束して、大天狗は去る。