チロルの山々

                                          高野圭介


それはそれは
楽しいチロルの旅だった。

 行くまではチロルが
どっち向いているのかも分からないが、

チロル・ハットから想像して、
アルプスのハイジを連想していた。


チロルに入り浸って、
山岳地帯の厳しさを思い知った。
 チロルには産業がないに等しい。

今では山岳という観光資源様々である。
スポーツも山岳バイクとか、
自転車レースがテレビをほぼ独占している。

ゴルフ、野球、テニスなどは陰が薄い。
当然とは言え、トレッキングはプロの世界だ。

私など、
ハイキングの域から出るわけにいかないと
、身に沁みて分かった。
この厳しい自然の前に、
私などははじき飛ばされてしまうだろう。



啼兎

かって、一般的にナキウサギは
ゴンボネズミ(牛蒡鼠)とよばれていました。
一般人にはやはりネズミと写っていたようで、
一見大きなエゾヤチネズミのようなものです。

 せわしなく、一生懸命動くウサギも、
時には外に出で「じっ」としていることがあります。
俗に「瞑想(めいそう)」と呼ばれるポーズは、
ナキウサギ特有な休憩姿勢です。




 みんなで2500メートルの高さにある
「乙女の池」へ出掛けたときのことだ。

約束の時間が来ても、
単独行で出掛けた中山先生が帰ってこない。

何もないだろうが、何かあったのかも知れない。
不安が過ぎる

手分けして、探した。
いよいよ見つからないときは、
救助隊の出動さへ言い出した。
そのとき、飄々と無事ご帰還の先生の弁である。

「いやあ、ちょっと昼寝してまして、
ふと、岩の間から見ましたら、
啼兎が『何ものじゃ』と、じーとこちらを向いている。

『いよう、ナキウサギさん guten tag』.と、
言ってやったら、何かしら言いながら、
そのまままん丸いお目々で見ているじゃないですか。
あちらさんも、珍しかったのかもね」

これで、中山先生失踪劇は幕