定石ブラックボックス論 高野圭介 |
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定石問答 「定石も知らんと、よう碁が打てるなぁ。鉄砲持たんと戦争に行くようなもんや」 「こない言われましてん。はんまやなぁ、あかんわ。」 「先日、私の小目に目外しに掛かってこられましたんや。挟んで打つ定石がありますね。 まあ、誰でも知ってる、あの変化。私は後、放っといたんですわ。」 「どないなったん?」 「その人が言うには、何か打って貰わんと、打てへん。困ったなぁ」 「そやなぁ。定石を覚えたと言っても、相手在っての定石ですから、 相手が何も来なんだら、定石にもならんわなぁ」 「定石を知っている、と言っても、行く道順だけで中身が分からなかったら、 生兵法は怪我の元だね。」 |
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定石の内部の動作原理や構造。 定石を覚えるといっても、先人の手によって、どうしてこのような変化が創られてきたか? その内部の持つ意味まで深く分からなくても、変化を丸暗記するだけが、覚えたことになっている。 現実の話として、定石の一つ一つを骨の髄まで理解して打っていることはあるだろうか? 既成の定石として打つことを、お互いに諒として対処している。 つまり、定石のブラックボックスは密閉されたままで、通用しているのである。 就中、江戸時代など、昔の定石など、偉大な価値を理解できぬまま、 古い!というだけで、もはや中身を知ろうともしないまま見向きもされない。 |
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定石は原理原則のコーディネートされたものだ。 プロの世界では定石通り打たれることはそう多くない。 全局の布陣配置の中で、定石を超えた変化が起きているではないか。 定石は知って、捨つべし! |