碁のスタイル

                                     高野圭介



 昨今、碁のスタイルというものが大きく変わってきた。
どんなことで碁の打ち方というものに流行が生じるのか。


 碁にはスタイル、というものがある。大きく分けて中の碁と地の碁。
世に言う武宮宇宙流と小林地下鉄。自分の感性に合った打ち方、というか、
完成してくれば「棋風」と言われるもの。

江戸時代


試みに、江戸時代の碁は小目を中心に隅の変化に百花繚乱のごとき
煌びやかな変化が研究され、永遠に輝く「定石」が生まれ、
その定石を駆使して、布石が成り立つような碁であった。

昭和時代
下って、昭和の御代、1930年代には呉清源、木谷実の星・三三・天元と
奇想天外な新布石が碁会を席巻し、呉清源一強時代を迎えた。



もちろんの中にあって、坂田栄男、橋本宇太郎らの才能煌めく碁が名声を恣にした。
戦後、高川秀格の一間トビが象徴するように、ゆったりした布石に落ち着いてきた。

21世紀のスタイル  
1999年までの20世紀は日本の木谷門下を頂点とする囲碁界が世界に君臨し
湯に入ったような日本一強時代があった。

2000年に入る頃から状況は一変してきた。
藤沢秀行が「馬の蹄の音が聞こえぬか」と予言した韓国、中国の台頭である。

当初、「ハングリースピリッツ」が原因と噂されたものだ。



現在では、世界棋士ベスト100以内には井山裕太、河野臨、他数人程度しか居ない。
原因としては駐韓とも囲碁人口は激増して、日本は囲碁人口の低迷にある。
囲碁界を支えるアマの機構も変わり、後援の新聞社も問題の一つではあろう。
したがって段の免許や棋書の売り上げも著しく低迷している。

AI囲碁のスタイル  
昨今2016年からAI囲碁の登場で
「AI対人間」の様相を呈してくることになった。
AIは囲碁を司っている従来の固定概念を覆して、
独自の世界を闊歩し始めているのではないか。

人間どもが戸惑いするような世界が忽然と現れたのでは無いか。
従来の人間には誤った考えや解釈が多いことに気が付き、
新しい可能性を示唆している。



素人目に見てそんな感じである。


何が変わってきたか?である。
私には何がどう変わってきているのかしかと分かりませぬが、
序盤から布石・定石の姿が変わってきて、忌避されてきた筋形も有効となり、
スタイルが定石無視の今まで見たことも無いスタイルで、
「AI定石」とか「AI定形」なども幾つか誕生している。
多くの棋士はAI詣での感さえある。

自分のスタイル
私たちアマではスタイルの人真似は猿真似に留まってしまう。しかし、
自分の碁はどこまで行っても、自分の碁です。「自分の碁」しか打てません。
そこで、自分で工夫するしかない。

私は中から打ち、そこそこ納得したら、
一転、外から打つ。これを繰り返して、なまくらスタイルを構築していった。
今は、中の碁から地指向を模索中である。と同時に、序盤早々から
AI先導のキッて、オシて・・・という戦いの碁から逃げるわけにはいかない。




誰しも今の棋力は上達していくひとつの通過点であるけれども、
今のスタイルは自分としては従来からの集大成でもある。

これを基盤にして、精錬し肉付けして、更なる飛躍を試み、アウフヘーベンされ、
変身した新スタイルの誕生が楽しみである。やはり日進月歩、日に新たなりだ。