囲碁のダイバーシティ

                                              高野圭介

 個性と棋風  
 大相撲を見ていたら
「組んでよし、離れてよしの力士です。」と紹介された力士がいた。
多彩な相撲が取れるということだ。
 力士の個性を、押し相撲、投げ相撲、あるいは業師、得意技で表現することもある。



それは個性というもので、碁で言う棋風に当たる。

 ハズ押し  
 相撲と囲碁の共通点は「ハズ押しに弱いこと」と言われている。
相撲では前からの力には力が出せても、横からのオシ・攻め・圧力には脆い。

碁も又しかり。

早治まりともなると「3線の二間ビラキ」が活き形のベースとなっている。
逆に、眼を取るには横から攻めることが理にかなっている。

独特の棋風   
 棋風は「押しには押せ」「変わり身」「出足の早さ」とか
「重い腰」などの特徴を言うことが多い。

 これに対し、
武宮の宇宙流、メイエンの押し込み流、小林の地下鉄、高川の一間、石田のコンピューター、
大模様の碁、シノギの碁、辛い碁、明るい碁などと棋風で言われることも多い。

 面白いのは天才宇太郎、天才山部などは非凡の表現であり、
「なまくら坂田」の異名で天下を馳せた坂田栄男は、組んで良し、離れてよしの、
どんな碁でも打てるのを畏敬の念で「なまくら」と呼んだわけだ。



碁の多様性 
 天下の名人は一局の碁の移りゆく環境の変化に柔軟、迅速に対応できる。

それは天稟の才に加えて、不断の努力で、
幅広く性質の異なるものを培っているものと思う。

 だいたいプロには各人の個性が強くて、一つの風格を備えている。
しかも布石から中盤、死活、ヨセと100%穴場が無い。
すなわち、棋士は碁の多様性に富んでいるのだ。

 自分流を墨守  
もちろんアマの世界も同様で、それぞれそれぞれ「狙いの碁」「力碁」「躱す碁」
あるいは「負けてもトントンで石が取れたら大満足」「ウッテガイ狙い」など
自分流を醸し出していて、頑固なまで自分流を墨守している。

    負けた碁に頷いている下手でなし  昭六

 碁とはどういうものか  
 そもそも碁には捕まえどころのないアメーバーのようなところがある。
碁の対局ソフトに「Many faces of Go」というのがある。
いろんな顔を持っている碁(多様性)とでも言うのだろう。核心を突いている。

本来「碁とはどういうものか?」と追求してもその多様性の故にか、正体が掴めない。



ダイバーシティー   
 この多様性はダイバーシティー【diversity】といわれている。

ダイバーシティ(多様性)とは個々人の「違い」を尊重し受け入れる・「違い」に
価値を見つける。

つまり、 さまざまな違いを尊重して受け入れ、「違い」を積極的に活かすことにより、
変化に対して、柔軟に対応できること。

 碁吉会の存在意義
 

 個性豊かで多様性・ダイバーシティの囲碁は古来同局無しと囲碁愛好者の心を掴む。
だからこそ、囲碁仲間のそれぞれ頑固なまでの個性がぶつかり合い、戦う。
相手の健闘を讃え合い、交流を深める碁吉会の存在意義がそこにある。