革の船とヘロドトスの歴史

                                                高野圭介



船の写真画集(交通博物館)

交通博物館
 2010年7月、客家の足跡を訊ねて、福建省から厦門へ行ってきた。
たまたま福建市で、交通博物館に入って、世界のいろんな船を見た。

 水上交通の手段


古来から、その時、こんなに水の上を往来するのでも、人智を集めて、創作しているのを知った。
水上交通の手段としての船舶に動物の皮から浮子まで力強い竜骨の船。
平底の船。櫓・櫂と帆掛け船。その仕組みも面白かった。

 竜骨の船


そもそも、竜骨の船は強靱で、外洋船には絶対必要なもの。
でも、徳川幕府は鎖国のため、竜骨の船を禁じたという。
したがって、平底の船で、冒険に乗り出した日本人はどれだけ痛い目にあっただろうか。

その交通博物館で、動物の革で作った船を見た。
またまた好奇心に火を付けたオドロキは未だに、記憶に新しい!

 革の船
たまたま、ヘロドトスの「歴史」松平千秋訳を繙いていたら、
バビロンの近くの、アルメニア人の革の船に関する記述が眼に飛び込んできた。




味気ない表現で、申し訳ないが、それを要約して、紹介する。

 

「アルメニア人が河を下ってバビロンへ通うのに使う船は、丸型で全部革で出来ている。
アッシリアの上部に住むアルメニア人の国で、柳の枝を切って、船の骨組みっを作ると、
その外側に、獣皮を貼り付ける。

そのとき、どこも絞らずに丸形に作る。
船の大きさは非常に大型もあれば、比較的小さいのもある。
どの船にも生きた驢馬が一頭は乗せられる。大きい船ならば数頭乗っている。
船でバビロンに着いたら、商売を済ませば、船の獣皮だけ残して、
骨組みや他のものはすべて売り払って、革は驢馬に乗せて陸路を帰っていく。」



歴史書としての
 『宍粟の碁』




「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスは勝者の言葉を信じなかった。
歴史は敗者の方が正しいことがある。彼は一つ一つ裏付けのある歴史を書き綴った。

私が『宍粟の碁』を編纂したとき、
実地で聞いた話、資料を繙いて、裏付けを重んじて書いた。


私の、A.C.Cの新西洋史の師、鈴木利章先生(神戸大学・文学部教授)は、
その手法がヘロドトスと同じで、
『宍粟の碁』「素晴らしい碁の歴史書」と評価して戴いた。


ギリシャの哲人
「歴史の父」

ヘロドトスの名言 



ヘロドトスの名言集

 
人間は環境に依存し、人間に依存するものにあらず


莫大なる富を有するものは、しばしば不幸なり。
中庸の財のみしか有さぬものは幸福に恵まる


嫉妬は人間に生まれつき具われるものなり


自尊心は愚者の持ち物なり


中傷される人間は二重に傷つけられる。

第一に、中傷を言う人間によりて、
第二には、中傷を信ずるものによりてなり。


女というものは、下着とともに、恥じらいの心も脱ぎ去るものだ。


人間の運命は、自分の魂の中にある。