剣碁一如



                              梅影悟彦  起案

                            高野圭介  編

 
梅影さんは座談の名人である。
ユーモアがあり、コミカルなお話にそれだけの内容が詰まっている。
先だってのしあわせの村での語りぐさだ。

「歴史の流れを見ると、碁と剣がよく似たような推移をしてるんです。
それが、中世の江戸時代から昭和、平成と、今の今までそうなんです。」

壮大なルネッサンスも凄い転換なんですね。
                                梅影悟彦


剣碁一如



加藤正夫「殺し屋」



柳生十兵衛「活人剣」


剣碁一如

私は聞きながら、私は剣のことは門外漢ですが、興味を覚えました。
そのとき、別のことが頭を掠めていました。

それは、
「切る」ということが共通の急所で、剣碁一如かなと。
 
加藤正夫は普通切れないところを切って、殺してしまう。
そこで、「殺し屋」という渾名が付いた。

元々石は一個一個で、切れている。石が繋がったら、大石死なずだ。
切られたら死ぬ可能性が出てくる。死んだら終わりだ。
したがって、石は切られないように細心の注意が必要だ。

柳生十兵衛の活人剣は非情剣とも言われる。
切り捨てる非情は分かりやすいが、
人を切って活かす?それはいよいよのところ禅問答だ。
達人の域では死即生であり、剣碁一如なのかも知れない。

                             高野圭介


囲碁ってさ 生き還るから好きなのよ

                             NHK囲碁番組入選作


剣心一如


剣禅一如

 
 
剣心一如

剣は人なり、剣は心なりといわれるように剣は心によって動くものであり、
剣と心は一元的のものである。
したがって正しい剣の修行をすれば正しい心を磨く結果になる。

剣禅一如

つまり、武の修行というのは相手に勝つという個我を主とした
相対的な世界を目指すのではなく、無我を主とした
絶対的な世界を目指すことにこそ意義があるのだ。

 
ルネッサンス時代


 ヨーロッパで、ルネッサンス時代の変革が最も面白い。

古来からのギリシャ文化、イスラム文化そしてキリスト文化と混合しながら
ヨーロッパに芽生え,発展し、定着してきたあらゆる文化は僧侶、貴族によって、
支配され、保護され、支えられてきた。

これをルソーが「自然に帰れ」と提唱し、貴族のものから民衆のものへ運動が
あらゆる分野で何世紀にも亘って起きて、事実、変革されてきた。
ルネサンス期に活躍した人物1 商業・経済 2 思想 3 文学 .4 美術 .5 音楽 建築

この世、すべて生々流転。史的弁証法に則とっている。




剣も碁もリアリティの変革中

その歴史を見ると、常に「安定→進化→成熟→安定→進化」の繰り返しである。

                                 梅影悟彦

「安定(正)→進化(反)→成熟(合)→安定(正)→進化」・・このように
正・反・合の変革の公式を示した。
では何がその変革の起爆を司るかというと、それは内部矛盾であるという。
これがヘーゲルの弁証法を引用して理論づけられた。

つまり、歴史上変革の現象はマルクスの言う二律背反の史的弁証法の証か。

                                高野圭介



変革中





剣の歴史







碁の歴史

 
中世・明治


歌舞伎の殺陣(タテ)のことを殺陣道という。
その中に、山形とか、波形などがあって、
申し合わせのやりとりで、緊迫感は無い。

 
お城碁に代表される家元制の第一手は
右上隅の小目から打つ、という不文律
のようなしきたりが重んじられてきた。

 
大正・昭和


リアリティに乏しい歌舞伎に飽き足らず、
沢田正二郎が新しく結成した新国劇は
殺陣の新機軸をうち出した。

 
突如として、呉清源・木谷実提案の
天元・三三という禁手を破った
新布石時代が登場した。

 
平成


チャンバラ劇の殺陣、テレビドラマの殺陣、
こま撮りの臨場感のある殺陣とした剣へ。又
剣のスポーツ化としての競技へ。(注:下記)

 
武宮・苑田らの宇宙流、小林の地下鉄、
石田のコンピューター、加藤の殺し屋。
多士済々の中央重視、ハイセンス時代。

 
現今


漫画劇画の普及で、ワイヤーアクションの
殺陣のように、超リアリティの殺陣として
一層、シュール・リアリズムの傾向がある。

 
井山らの国際化時代の到来である。
石田の言う「今様の碁」はヨミの裏付けで
打てる布石無視の方向性を見る。


(注)柔道に段位制度を入れたのは柔道の加納治五郎であり、囲碁に元々あった段位制度を真似て作ったとのこと。


棋界の実力者が

今様の碁に挑戦


2014年11月2日、NHKの囲碁番組で、面白い碁があった。

張 羽としては意欲的というか、破天荒な布石で始まった。
黒1から7まで、眼を見張った。

ある意味では、とんでもない、だし、あの正当派・張 羽が新機軸を開いたか?
つまり、棋界の実力者が負けじと、今様の碁に挑戦したようにも思える。



互先 横田茂昭 vs 先番 張 羽

196手以下略  先番 10目半勝ち