教えることは学ぶこと

                                              高野圭介

愛理の学び
 子どもの育成、否、赤ちゃんの生育はいつもは関わっていないが、
孫の愛理がすくすく大きくなるのに接すると楽しいものだ。



 海綿があらゆるものを吸い取るように、
手当たり次第見るもの触るものすべてを学習しているように見える。

まさに無から有を生じるような変貌を遂げているのだ。

 

世界中のあらゆる学問をおさめたファウストの学問




ファウスト



メフィストフェレス


ヴィッテンベルク大学の神学者であるファウスト博士は、
世界中のあらゆる学問をおさめるだけでは飽きたらず、
黒魔術に興味を示していた。

そこで知り合いの魔術師に知恵を借り、悪魔メフィストフェレスを呼び出す。

ファウストはメフィストフェレスと契約を結ぶ。
その内容は、魔王ルーシファーに魂を売り渡す代わりに、
メフィストフェレスを僕として使い、全知全能の力を得ること。

契約の期間は24年。  24年が経てば、
ファウストは否応なしに魂を奪われて地獄へと落ちることになる。

自由の限りを尽くす 
ファウストは手に入れた力を使って、自由の限りを尽くす。
あるときは透明人間になって法王庁の晩餐をめちゃくちゃにし、
あるときは皇帝の前でアレキサンダー大王を蘇らせ、
あるときは絶世の美女ヘレナを手に入れる。

地獄へと堕ちてゆく
しかし24年という歳月は瞬く間に過ぎ、
ファウストの魂が奪われる時がせまる。

死にたくないとわめきながらも、ファウストは契約通り、
メフィストフェレスに手を引かれて地獄へと堕ちてゆく。

 
地獄に堕ちようとも


私などはファウストでなくても、あらゆる学問どころか、
ほんの一部の、囲碁だけで充分過ぎるものを学べたら最高で、
地獄に堕ちようとも一向に構わないと公言できる。


 万物皆師
「学ぶ心さえあれば、万物すべてこれ我が師である」
言い古されているそんな言葉が浮かんだ。

 ちょっと付け加えれば、「良しにつけ悪しきにつけ」だから怖い。

教えることは学ぶこと。そのように思っていました。
教えられたり教えたりの中で「碁とは何か」と自問を繰り返しているのである。

藤沢 モト  
 折しも、週間碁に記載された「大丈夫、死ぬまで生きる」
藤沢モト著に
ある言葉

 曰く
「人に教える、人を育てるということは自分が
不要になることに向かっているでもあります。」


 全く想像もしない卓見だった。

活力ある時間
 私は碁を教える機会もそこそこある。
しかし、教えるというよりも、「棋理の基礎学力」「攻守の戦略性」
「全局のバランス感覚」などなど、私の囲碁観を伝えたい。



おこがましい話かも知れないが、限られた活力ある時間内に、
自分の持てるすべてのものを分かって貰いたいというのが本音
だ。