桃太郎伝説

                                                        高野圭介

    


「坂の上の雲」が面白い。

何とも明るくて、楽しい。司馬遼太郎が目から鱗が落ちるよぷに食い入って書いただけのことがあって、
愛読書の一つだった。それがドラマ化された。




インターネットで「坂の上の雲」を見ていると、厳父・秋山平五郎久敬が
幼い頃の真之に話して聞かせた「桃太郎」の話を真之はいつまでも覚えていた。

そして、その「桃太郎」の昔話が持つ意味について、
明治三十三年に水交社に寄稿した『黒船初めて江戸湾に来るの図に題す』という記事で紹介した他、
小学校から講話を依頼された際にも小学生たちに話したという。
秋山家の「桃太郎」の話は下記のようなものである。

 



秋山家の「桃太郎」の話

「桃太郎」即ち「百太郎」とは取りも直さず日本多数の男子と言ふことを意味せり。
又「日本一の吉備団子」は就中大切の意義を含めり。

其の「日本」とは日本第一に非ずして、日本一ツ即ち挙国一致の意、
「吉備」は十全、「団子」は円満団結の意ありて、之を一括すれば、
日本国中一ツの如く完全無欠に団結すべき心の鍵を暗示したるものにて、
之れあればこそ犬猿相容れざる仲の犬と猿と雉の如きものも相提携して鬼ヶ島
即ち海外に発展するを得る所以なり。

又、犬、猿、雉は禽獣の性能を以て、人間の心力を表示せるものにて、
犬は忠実、勇敢、即ち勇、猿は炯智、敏捷、即ち智、雉は堪忍、慈愛、即ち仁の天性を有し、
又犬は地を駛留も木に登る能はず。猿は木に登るも空を飛ぶ能はざれば、
犬、猿、雉は獲得長の能あり。人たるもの此六性三能を兼備すれば、
如何なる難事に当るも失敗すべきにあらず。
「鬼ヶ島」は海外赤髭の住む所、又その持てる宝物は、単に金銀珠玉にあらずして、
有形無形、彼の長所利点と心得て可ならむ。

之を要するに、此桃太郎の昔噺は、
「日本多数の男子は故国に恋々たらず、海洋を越えて外国に渡り、箇々の名利に拘らず、
挙国一致の団結を保ち、天賦の心力たる智、仁、勇を応用して、
他外国人の長所利点を取来れ」との意味を含めるものなり。

 


我々が知っている「桃太郎」や「竜宮城」「竹取の翁」などの童話は中国にも類似の話があり、
たぶん、ではあるが、韓国にもきっとあると思う。

中国の鬼

中国では、桃太郎の退治した鬼は悪い者で、日本兵は鬼畜だった。
又、中国は神の国であり、日本でも同様に神の国だった。
神の国同士が社会正義の錦の旗を立てて戦っていたわけだ。


しかし、秋山家の「桃太郎」は、日本の、否、平五郎久敬の社会正義で、他にあるはずがない。


日本の国の形を美しく堅固なものに築き上げていく上で
、一人一人がこれを支える自分のバックボーンを確固とした姿で捉えようではないか。