先着の価値・一着の価値



   碁とはいったいどういうゲームか?

                                                      高野圭介

将棋「先手有利」覆る
今日(2009年4月1日付け)の朝日の夕刊に、
将棋「先手有利」覆る、統計40年勝率初めて5割切る、という記事が載りました。

碁は黒が有利でコミが増えてきましたのに、
将棋は逆の方向になっているのが、不思議で面白いと思いました。
どういうことなのでしょう?

この問題が提起されました。


 将棋の戦いと駒組み
私の見解です。

将棋は双方の駒組みが最高潮に達した時、
石榴が弾けるように中盤戦に突入したと思ったら、
たちまち息も継がせぬ終盤戦に直行です。
そこがまったく違います。

将棋の駒組みの焦点は、
1.遊び駒 2.位取り 3.王の囲い 4.駒の連携などです。

戦陣に不備を感じたら、
開戦を伸ばして、戦列の修正、つまり駒の組み直しです。

そうなると、先も後もありません。

碁は一手の価値の累積  
碁は一手の価値の累積です。

碁盤は広いから、
禍を以て福と為す式の戦術転換も可能であるとはいうものの、
冒頭の、碁は一手の価値の累積には変わりありません。

一手の価値の追求こそ、碁の真髄という・・・一つの真理があります。


碁と将棋の違い
碁と将棋の質的違い。
それは碁は包囲ゲーム。将棋は戦争ゲーム。その相違からでしょうか。

因みに増川宏一はゲームのジャンルを5つに分けています。
他の3つは、双六などの競争ゲーム。5目並べのような配列ゲーム。
日本にはありませんが、マンカラ・ゲームです。

cf: 増川宏一著 『盤上遊戯』

 囲碁哲学のジャンル  
囲碁の真理の追究、それは囲碁哲学のジャンルです。
いろんな角度から先人は洞察しています。

碁は調和なり、碁は変化なり、碁は詰め物なり、云々。
中に、碁の先手必勝についての考察もあります。
これは五路盤までは間違いなく先手必勝です。
七路盤より広くなれば先手有利程度です。

どの程度有利かというと、盤の広さに関係なく、
1子の価値が13〜15目程度の感じ。それが定説でしょう。

先手の価値と一着の価値
先手の価値と一着の価値について。

一着の価値を信じて、盤に向かうとき、奇策を取らず、正着に徹し、
後手の先手を尊重し、決して焦らない。風格さへ醸し出てくる。

いわば,動かない碁。
たとえば、イブシ銀の島村俊広など。

 一方、先手の価値に着目したとき、
フリカワリ、キカシ、間に合わせなど、大局観を優先。
軽妙で鋭い着手にうま味、切れ味を感じる。

いわば、動く碁。
たとえば、カミソリ坂田栄男など。


二律背反の世界
これら二律背反の世界は同一盤上で共存もするし、別のものでもない。
またどちらが優先するものでもない。棲み分けたりはしない。

碁の、軽いのと、厚いのとの関係にも似てくる。
囲碁哲学の深奥さを物語るものでもあろう。