酒にどっぷり浸かったままの断酒

・・・・・秀行先生、厚みのある人生を信念で生きる・・・・・

                                                             高野圭介

        

 北京を満喫した。
五月の北京は十月と共にもっとも良い季節。
2009年5月、私は碁に観光に、北京を満喫した。
 旅は風土に融け込むのが一番。風土は自然そのものだが、結局は人。
現地の人との交わりである。
 

松谷暁明先生の

藤沢秀行の追悼文

 

今回は唐騰さんのご紹介で、作家松谷暁明先生を知った。

松谷さんは若いごろ日本で留学して、
日本東京学芸大学院で、スポーツ心理学を専攻した。
彼は言う。「スポーツにはやる気が一番」と。

彼の著作は小説『大陸蒼狼』
今、彼は藤沢秀行の追悼文を依頼され、執筆中と聞いた。

彼女の宅で、すき焼き
私は、あの日の、秀行先生と酒のことを思っていた。

河本敏夫先生が郵政大臣に就任されて、
お祝いの会が東京で催されたときのことである。

たまたま私の家に投宿されていた宮本直毅先生と二人で、
お祝いに上京した。

そのとき、宮本先生に連れられて、秀行先生の宅へ立ち寄ったのである。
宅といっても、奥様のいらしゃる宅ではない。彼女の宅である。

 秀行先生の断酒  
石田芳夫先生の吹き込んだ歌のテープを聴いておられた
秀行先生に案内されて、二階へ。

やがて、先生は階段を何回も上り下りして、すき焼きの用意をされた。
やがて徳利を手にとって
「おお、いい燗だ。高野さんどうぞ」と、盃を差し出された。

私はビックリした。「いえいえ、先生こそ、どうぞ・・・」
そのときである
「今、酒を止めていますので・・・」
秀行先生の断酒のことは聞き及んでいたので、
 あ、そうか、大事な対局前か!とすぐ分かった。

 この世の出来事?
あれだけの酒豪である。良い燗の、酒の臭いのまっただ中にいて、
この応対はいったいどういうことか?


その晩泊めて貰って、翌朝、この世の出来事とは思えないまま辞した。