対称性の自発的破れ



                                              高野圭介

ノーベル賞
ノーベル賞・物理学賞の中で「対称性の自発的破れ」について、
私には鬱勃として好奇心が去来しました。
 
南部陽一郎氏の授賞理由は「対称性の自発的破れのしくみの発見(1961)」
益川敏英氏、小林誠氏の授賞理由は「CP対称性の破れを説明する
理論モデルの提唱(1973)」ということだそうです。

その領域は異なるものの、
「世界の根源における対称性の破れ」を明示したという点で、
なぜか三氏の受賞業績は共通性を持っているとも伝えられます。



「対称性の自発的破れ」の説明

理論的根拠
自然は対称性を持っていると見なされていたのですが、
対称性が保たれてはまずいのが宇宙の始まりなのです。

自然には対称性が破られる場合があることを、
ノーベル賞の南部陽一郎氏は示して見せ、
物質からなる宇宙の理論的根拠を与えたのです。


妥当な比喩T

朝日の説明


「たとえば底が盛り上がったワインの瓶は上から見ると左右対称なのに、
そこに小さな玉を入れると、玉は瓶底の中央ではなく、
へりに近いくぼみに落ち込むようなものだ。」

( 朝日コム朝刊 2008-10-08 )


妥当な比喩U

読売の説明


「丸いテーブル上にコップが並んでいて、そのそばに人々が腰掛けている。

各人は自分の前の、右と左のどちらのコップを取ることもできる。
一人が右のコップを取ると、次々と右側のコップを取るので、
このテーブルでは『右のコップを取る』という状態が決まる」
(朝刊 2008-10-08 )


左右非対称
この世に現実に存在する物体は厳密には左右非対称です。
昔から、
自然界における左と右の対称性についても研究されてきたようです。

普通の人は、いつも左右対称の服を着て、靴を履いてはいるが、
髪は真ん中では分けず、七三とか六四に分けるのも、
顔との調和、美観のバランスにおいて、
対称性の自発的破れで救われているという
安心感からではないでしょうか。


鬼門の
左右対称



ここに「碁の左右対称」について論及したいと思います。

三三は古来、鬼門として忌避されてきました。
禁じ手でもあったようです。左右対称の星・天元もほとんど準じています。

呉清源がこの鬼門に挑戦して、実戦で勝ち切り、
問題ない!No problemと天下に照明しました。


いわゆる「真似碁」も左右同形の一種でしょう。
「二連星」「三連星」「四連星」はいっこうに疑問視されることもありません。
「三三から二の二へのコスミ」「星から三三コスミ」が妙手になることもあります。


「割り打ち」はヤジロベエ。形の重心の左右の中心です。
でも、同形はは珍しいでしょう。


否定を証明
しかし、問題がないとは言えません。

肯定の証明はあらゆる否定を証明することから
出発しなければならないことは分かっています。


いわゆる「観音開き」はやはり問題で、否定されます。
「左右同形中央に手あり」「三目の真ん中」も問題。
「鶴の巣ごもり」とか、「五の五」の難しさ。

問題が生じる筋
私は概して左右同形は避けて打ちます


やはり力は左右どちらかに重きを置いて思考するのが良く、
左右平等に石の力を分けることは、
将来問題が生じる筋を孕んでいると、直感しているからです。

やはり碁では左右対称は避けた方が無難です。
ここに「対称性の自発的破れ」は棋理の一つではないでしょうか。