貝原益軒の養生訓 私は「接して漏らさず」というのが有名な益軒の言葉で、 余生を生きていく指針にと、養生訓に求めた。 元気で過ごし、長生きをすることが一番の楽しみだ、と言っています。 それはいかなる金銀財宝の富や名誉の貴さよりも優れたものとしています。 その処世術のエッセンス! ここに、余生のための、力強いバックボーンを見た。 高野圭介
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1.人間の尊厳性 | 養生の方法を心得て健康をたもつことである。 これこそが人生で最も大事なことだろう。 長寿を五福の第一にしている。長生きは、 すべての幸福の根本といわれるのである。 |
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2.養生の心がけ | 養生の術を学び持続して実行すべし。 |
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3.内なる欲望と外なる邪気 | 前者は、飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、言語を操る欲。 後者は風・寒・暑・湿の天の四季をいうのである。 |
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4.七情を慎む | 養生の道の根本は、内欲をおさえる(我慢する)ことである。 それは飲食を適度にして過食せず、 色欲を慎み、精力をたくわえ、 正しい睡眠をとり、ほどよく運動をして 気の転換をはかることなどによるものである。 七情の中でも特に、怒り、悲しみ、憂い 、思いを少なくすることを心がけることが大切であろう。 |
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5.心気を養う養生術 | 食事は腹八分がよくて、食後は適度の運動をする。 寝ることを好んではよくない。気(血)の循環が悪くなるか らだ。 色欲を慎み、精気をむだつかいしてはいけない。 養生の根本は、発病する前に予防することであろう。 |
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6.嗜欲と忍 | 養生をしようとする人は、それゆえに、専ら好き勝手なことをしないで、 欲をおさえて我慢することが肝心である 「恣」の一字を捨てて、「忍」の一字を大切に守らなければならない。 |
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7.養生は畏れのの一字 | 人間の欲望を畏れ慎んで我慢することである。 つまり畏れることは慎みの心の出発をなすものであって、 恐れると慎む心が生まれるのである。 |
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8.身体と運動 | 毎日少しずつ身体を動かして運動するのがよい。 |
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9.内敵には勇。 外的には畏れ |
飲食、好色などの欲望は、強くたえて気ままにしてはならない。 強い精神力なくしては内欲に勝てなのである。 風・寒・暑・湿は、身の外から入り込ん でわれわれを攻めるものであるから、外敵という。 四季のなかで風・寒はもっとも畏れるべきであろう。 |
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10.人生の三楽 | およそ人間には三つの楽しみがある。 ひとつは道を行ない心得違いをせず、善を楽しむこと。 二つは健康で気持ちよく楽しむこと。 三つは長生きして長く久しく楽しむことである。 |
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11.常と変と養生と | およそことには<常>と<変>とがある。 常の時には常を行い、変に望んでは変に応ずればよいのである。 臨機応変、その時において義にしたがえばよい。 常に応ずる道と変に対応する義との相違を心得ておけばそれでよい。 |
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12.睡眠と養生 | 古人が、睡眠の欲を飲食と色欲とともに 三欲としているのはもっともである。 睡眠を少なくしようと努めれば、 習慣になって自然に睡眠が少なくなる。 日頃から少なく眠る習慣をつけることが大切であろう。 |
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13.気血の流通は健康の元 | 気血がよく流通してとどこおりがないと、 気がつよくなって病気にならない。 気血がよく流れないと病気になる。 養生しようとする人は、 出来るだけ元気が停滞しないようにすることであろう。 |
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14.食後の養生訓 | 朝夕の食後に長く安座してはいけない。 さらに横になって眠ることは禁物である。 食後は常に三百歩ばかり歩くがよい。 ときには五六町ほども歩くことはさらによいのである。 |
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15.働くことは養生の道 | 流水はくさらないが、溜まり水は腐る。 開き戸を開閉する軸は虫が食わない。 この二つの物は絶えず動いているからそうあるのだ。 人の身体も同じ理であろう。 |
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16.養生法の要点 | 養生の道は多言を必要としない。 実行することは、ただ飲食を少なくし、病気を助長するものを食べず、 色欲を慎み、精気をもらさず、怒り・悲しみ・憂い・思いなどの 感情に激しないことである。 心を平静にして気を和らげ、言葉を少なくして無用のことを言わないで、 風・寒・暑・湿・の外邪を防ぎ、またときどき身体を動かし、歩行して、 だらしなく横になって寝ることをせず、食気の循環をよくすることだ。 これが養生の大切な点である。 |
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17.動と静の養生 | 時の応じて動と静とを実行することが気を養う道である。 |
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18.気から百病を生ず | 『素問』という医書に 「怒れば気上る。喜べば気緩まる。悲しめば気消ゆ。 恐れれば気めぐらず。寒ければ気閉じる。暑ければ気泄る。 驚けば気乱れる。労すれば気へる。思えば気結ぼうる。」と 書かれている。すべての病気はみな気から生ずる。 |
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19.丹田に気を集める。 | 気を養う術は常に腰を正しく据えて心気を丹田に集め、 呼吸を静かにし荒くせず、 事をする時には胸中から何度も軽く気を吐き出して、 胸中に気を集めないで丹田に気を集めなくてはならない。 |
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20.七情と養生 | 七情とは、気・怒・哀・楽・愛・悪・欲のことである しかし医家では七情を喜・怒・憂・思・悲・恐・驚とする。 また六欲というものがある。耳・目・口・鼻・身・意の欲である。 七情の中で、 怒りと欲との二つはもっとも徳を傷つけて生をそこなうものだ。 だからこれをおさえて忍ばなければならない。 |
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21.呼と吸と | 吸い込んだ気が体内に一杯になったならば、 口から少しずつ静かに吐き出すこと。 これは古く汚れた気を吐き出して、新しい気と古い気との 取り替えであるからである。 これを実行する時には、 身体を正しくして上向きの臥し、足をのばし、目を閉じて行う。 |
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22.調息法 | 調息の法は、呼吸を整えて静かにしていること |