金雀枝(エニシダ)の黄

                                         高野圭介


 朋友・故北島寸山さんが句集『星』(1997年刊行)を上梓された。
 私に一文を書けと言われたので「Sternenzert」(星)の題で、寄稿したのだが、
そのあとがきに、私のことを紹介されている。

「囲碁界では名高い高野圭介・碁吉会会長は
ご自分の出版物も多いのですが、
現在でも意欲的に執筆されている。
 俳句は、朝日新聞全国版に、阪神震災の俳句を募集した中に、
選者・金子兜太に次の一句が入選した。

生きてるよ地震三日目の寒電話   圭介

また、地元神戸のしあわせの村にあるシルバーカレッジの
校内の掲示板に、掲示してある句

 失恋の娘に金雀枝の黄のまぶし   圭介」





上の金雀枝は京都府八木町で、いきいき塾の早朝、散策の時、
太陽の出るのを待って写したものです。
cf:「もの言う翔年」ユリウスHP


 因みに歳時記での、エニシダ(金雀枝)について

「金雀枝はマメ科の落葉低木。五月頃になると、
葉の付け根に短い柄のある黄色の蝶形の小花を1,2個咲かせる。
これが枝全体に群がって咲きしだれるさまは明るく美しい」と、ある。

     金雀枝の黄にある空の碧さかな   石川風女


 ヨーロッパに分布する金雀枝の一般種・キティス・スコパリウス
(Cytisus scoparius)の種小名は(箒のような)を意味しているという。
これは金雀枝の枝を集めて、箒にしたことから由来しているという。

 それ以外に、キリスト教伝説に、「側に隠れたキリストをユダに密告した
罰当たりの植物」と、されているのだ。

私が金雀枝の句を詠んだのは鉄拐山の傍、
北への降り道、おらがじゃや・・・の近くだった。
何か、人に暗示しているテレパシーを感じたのか?


 因みに言えば、金雀枝はプランタ・ジネット家の紋章である。
アンジュー公国のジョフロワ伯が、金雀枝を兜に挿して、奮戦した故事によるもので、
武門の誉れを「将軍の植物」=(プランタ・ゲニスタ)で、象徴させ、
このゲニスタなる語が、日本に渡って、エニシダとなった。
   この項 cf:『架空庭園』荒俣宏著p.150.


 本年2005年5月7日に、碁吉会はチューリップ碁会のメンバーで、
義経・弁慶、熊谷父子の通った道を歩くことになっている。
鉄拐山へ登ったら、きっと、あの金雀枝が鮮黄色を
撒き散らして咲き誇っているに違いない。