懐かしい陳志行博士

                       2014年3月10日    高野圭介

 1999年の名人教授杯から毎年参加して、15回目の参加である。
唐騰さんから名人教授杯の説明に、
「名人教授杯は中国財界、教授らの著名人が大勢参加されています。
例えば「パソコン打ち碁ソフトの手談を知っているでしょう。
その手談の創作者が陳志行博士なんです。」



 巨匠・陳博士の足跡を見れば、日本では1988年には日本コンピュータ囲碁協会が設立され、
1990年、91年と日本コンピュータ囲碁選手権大会が開催され(HandTalkが連続優勝)、
その後は財団法人FOST杯(1995年-99年)およびコンピュータ囲碁フォーラム杯
(CGF 1999-)に引き継がれて現在に至ってます。

また、1993 年のコンピュータ囲碁世界大会・成都大会では、
陳志行(中国、HandTalk)が優勝し、その名を轟かした。

 私:高野圭介は陳志行博士と、2004年秦皇島・名人教授杯、1回戦で対戦した。
今回で、3年前から2度目の対局である。

 本大会、 9勝0敗でぶっちぎり優勝は元プロの欧陽世承さんで、
陳志行博士は2位だった。私は陳式布石で、見事にやられた。

 その碁を陳博士の解説付きでご披露しよう。


「手段」碁のプログラム

−陳志行博士15年の成果と世界選手権大会ー

                                      高野圭介

 陳志行博士と、2004年秦皇島・中国で開催された
「名人教授大会」の第1回戦で対戦した。
3年前から2度目の対局である。
 陳式布石で、見事にやられた。
投了後、私が棋譜を取っていると、一緒に取って
「記念に、この棋譜を戴きたい」と言われた。

この大会は
陳先生は2位、私は13位の結果に終わった。



その夕食時、
「この碁は私が負けていました」   「ほんとう? ご冗談でしょう?」


帰国寸前の会話

先生は1931生まれ、73歳私と同年である。
先生は「お若いですね。私とはえらい違いだ」と言われるので、
「その代わり頭脳の方は先生とは月とスッポンです」と言って、
2人で顔を見合わせて呵々大笑した。


 陳志行博士は広州の人。

 化学の教授であったが、1991年に一念発起、コンピューターと取り組み、
碁のプログラムに着手。以来15年経った。
プログラムはPCはWINDOWS XP 使用で、
SGF file Records を駆使してプログラムを組み立てるそうだ。

最初の国際コンピュータ囲碁大会はすでに1985年台湾で
国際プロ棋戦で知られている応昌棋氏の尽力で催されていたが、
着手2年後の1993年、成都での大会で、
見事、優勝された。

初め日本の科学技術財団がスポンサーとなって、
世界で30ばかりのパソコンの碁が覇を競った。
優勝賞金\1,000,000.であったと思う。
6回ばかりで、スポンサーが降りて
大会は休止状態となってしまったが、
当初は台北の「Ken Chen:陳」が何回か優勝している。

爾来
先生の作品は日本では「Hand Talk:手段」の名で商業化されている。
 現在のプログラムの実力は上位数点はほとんど甲乙付けがたく、
日本棋院の審査ではまず初段程度ということだ。

 現在のコンピューターソフトの問題点は「形勢判断」にあると、聞く。
しかも、形勢判断は次の3点が急所であると言われる。
 @ 連続:石が繋がっているか
 A 眼:生き死に・死活問題
 B 碁形:石のバランス(部分も全局も)

 因みに、昨今、世界の著名な囲碁作者は
Mark Boon(オランダ、Goliath)、 Ken Chen(アメリカ、Go Intellect)
Ken Chen(台北)、David Fotland(アメリカ、Many faces of Go)、
Bruce Wilcox (アメリカ、Nemesis),Janusz Kraszek(ポーランド、
Star of Polland)Walter Knopfle(ドイツ、Modgo),
Martin Muller(スイス、Explorer),Kuo Kuan Kao(アメリカ、Stone)。

日本では
河 龍一、林 和芳,堺 順市(碁きちくん),実近憲昭らが頑張っている。

さて、本年・2004年10月2日3日の2日間、岐阜で、
コンピュータ囲碁フォーラム杯(CGF 1999-)主催の
コンピューターの世界選手権大会が開催される。
 私はぜひ大会に足を運んでみたいものだ。






お盆前のこと、
陳先生からメールが届いた。

要するに、
「ヨセは白に厚く、先手ヨセを棋譜2から棋譜4まで
順当に打てば黒に4目残っているが、コミは出せない」

懇切丁寧な棋譜解説は以下の通り(原文のまま)

私は先生が親しく対局して頂き、この碁を
一局を追求するこの真摯な態度に感激している。
(高野記)



Dear Mr. Kono,

    I reviewed the game when I was in Qinhuangdao.
I concluded that the game will be very close if you did not resign.

    After I returned to Guangzhou,
I ask a friend of mine to review the game. He is stronger than I in go.

    At the first sight, my friend said that
the game is very close with black's slightly leading. However,
he found at the bottomleft corner that white has a biggest counter-sente yose,
so white will win.

    According to his instructions,
I tried to finish the game and to see the result.
The moves are collected in 4 kifus recorded in the files I attached.

    Kifu 1 is the real kifu, maybe with order error.
    The other kifus are the moves that I predicted.


">
Kifu 1.

    Kifu 2: The white yose at the right margin and
at the topright corner is whites sente.
    White 181, running out the 3 stones of the topleft corner is the biggest yose.
    At the left margin, if black 185 moves at 186, that is a ko.
However, black is lack of ko-threats,
while white has many ko-threats on the bottom margin.


">
Kifu 2.

    Kifu 3: Black 187 at the bottomleft corner is the biggest yose at this time,
but white 200 is the biggest counter-sente yose.
    At the bottom-right corner,
black 201 connects to save a stone,is miai with white's 202,
but the former is slightly bigger.
Now white is obviously winning.


">
Kifu 3.

    Kifu 4: black has 4 moku more than white, so white wins.


">
Kifu 4.

    Best regards,

 Chen Zhixing
 cesczx@zsulink.zsu.edu.cn
  2004-08-13