上達と下達

                                                      高野圭介


上り下り




坂道の上り下りは足の感触ですぐ分かる。
列車の上り下りはとても分かり良い。

海上も万国共通右側通行だが、河川には上り下りがあって、
それももちろん右側だろうと思っていたら、

♪春のうららの 隅田川〜のぼりくだりの 船びとが〜
滝廉太郎のメロディに、情景が目に見えるようだ。


アガリとクダリ
片や、役人上がり。片や、天(アマ)下り。
リタイアの官吏でも、アガリとクダリとはこうも違うのか。
上がりは双六上がりのようだが、下りは何か美味しそう。


上がるも速し

下がるも速し


スポーツの世界ではシュンというものがある。

プロというのはごく短期間に上がり続け、ピークの栄光の後、
何の、どこがどうだか分からないまま下り始める。
そして三下り半に繋がる?

これは栄枯盛衰というか、自然の理である。


おっとどっこい、ジンクスは破られる。

2008年北京のオリンピックで、北島康介の100bブレスだ。
76年ぶりという、連覇で、金メダルを勝ち取った。

嬉しい予言の、言い損こ間違いだった。





入れ替わり



 囲碁の世界でも、トップの座は十年ひと昔というが、
十年も経てばほとんど入れ替わっている。


棋士の棋力とて、どれぐらいがピークの時なのだろう?
とは言え、新進気鋭は続出している。

入れ替わりのスピードも速い。




上達の中に

下達あり



人のことを言うまい。

かく申す自分の棋力について、永の年月の間に、
追い風、向かい風、順風、逆目、障害、.いろいろ感じてきました。

一目強うなったと感じることが
百回あって、全然そのままであったり
して、
当然とは言え、哀しくなったこともあれば、

いつの間にか、打ち易くなったと手応えを感じたとき、
少し手が上がっていたこともある。

 昨今のスタミナの減退やもの忘れの物差しを当てれば、
今すでに脳味噌の皺にじわじわアイロン掛けが
始まっているのに気が付いている。

老いの坂に下り坂、上達の中に下達あり。
その思いを馳せる。
弁証法の教えるところである。