丈和の訓戒

ーー究極の囲碁哲学ーー



                                 高野圭介







丈和師

訓戒抄




本因坊丈和 訓戒 抄


「囲碁に三法あり。石立て、分かれ、堅めなり。
三つの内、一を得らば凡ならず。

 凡そ三十手、あるいは五十手、百手にして
勝負を知るを修業の第一とす。

 修業に正邪あり。
正道に志せば上達し、邪道に志せば下達す。
これ初心の心意なり。

 また、
地取り、石取り、敵地へ深入りし、石を逃ぐる、皆悪し。

 それ地取りは隙なり。石取りは無理なり。
深入りは欲心なり。石を逃ぐるは臆病なり。
故に地と石を取らず、深入りせば石を捨てて打つべし。

 地を取らざるは堅固、石を取らざるは素直、
深入りせざるは無欲なり。
石を捨つるは尖きなり。

 とかく石を備え堅むるを第一とし、
次に敵の隙間を打つべし。」



『丈和』 藤沢秀行著 日本囲碁大系10 筑摩書房


林  裕 識


丈和といえば豪力無双の力碁といっぱんに伝えられているが、
この訓戒に見る限り、
彼の印象はまったく別と言わなければならない。」

『丈和』 巻末「人とその時代 本因坊丈和」 林裕 識 より


高野圭介

感想


とても難解である。

分からないままも、繰り返し読めば、
何と、
囲碁玄々の妙がひたひたと染み込んでくる。

 まさしく、究極の囲碁哲学である。
座右の訓としたい。