気が通る

                                             高野圭介

太極拳の気
須磨・朝の会太極拳はもう15年も続いている。
指導を仰ぐ佐藤靖子老師の口癖

背筋をピンと立てる身法と、ゆっくり息を吐き、
ゆっくり動く放松(ファンソン)」つまり粗忽・慌てが禁物、
緊張しぱなっしがダメで、緩めないといけない

と言われる。

又、動きには虚実があって、実の時は気が通らないで、
実から虚に移るとき、気が通る。緩やかな虚が命なのだそうだ。


山岡鉄舟
ゆるやかに動かず行けば気は敵を
               おおい通すぞ不思議なりける   鉄舟


山岡鉄舟は「剣術の気の通ずると通ぜざるわけ」という文章を書き、
気迫を込めて相手に当たると、かえって気が通じず、
むしろゆったりとしていれば、かえって気が通じるとあります。

一筋にするどく気をかけると、自分の身体で気が止まってしまい、
相手に通じないということです。

ところが、ゆるりといくと、
その気が相手の全てを包むように拡がり、相手に通じるのです。



気迫は
気にあらず


また、気迫をもって相手に向かうと、
自分の気持ちはいいのですが、
相手にはその気が通じない。

相手を圧倒しようなどと考えて気を遣ってはいけません。
そのような気の使い方をすると、
相手の偉大なる潜在意識は猛烈に反発する。

ゆったりこそ気
一方、やさしく、ゆったりしたという気持ちで臨めば
「やさしい」「ゆったりした」という意識が、向こうの潜在意識に伝わるので、
相手は喜んでこちらの気を受け入れるのです。

気を張ってはいけません。やさしく相手に接することです。



碁における
気合いと気


私は盤に向かうとき、いつも気を引き締め、士気を高めて臨む。
碁には戦う気力が要る。適当な緊張感が必要だ。
気合い充分でなければ、後れを取る。

そのように、常に自分に言い聞かせて盤に向かっているのだ。

まるで、太陽と北風で、
相手を圧倒しようなどと考えて石を握ることなど以ての外!
と言うのにはビックリした。

本当の気を通すためにも、丹田に心を鎮め、
ゆったりした石立をこそ目指さねばと、
そして碁の質が変わってくるかもと、今改めて考えさせられた。