スリー・ダイヤの苦悩
                             高野圭介


 「三菱の車が来る・・・危ないぞ・・・逃げろ」
しゃれにもならぬこんな言葉を聞いた。

いったい何が起きたというのだろう。

 もう25年ばかり前、友人のBruce Thomson の妹 Marry が
Los Angeres 沖の St.Catherina 島で、
結婚式を挙げるから参列せよと誘われたので、
California に、ご自宅を訪れたときのこと、
 ご尊父の Jean が「the Mitsubisi is good !」と言う。
どうも、日本の三菱の株を持っていたらしい。
業種を聞いたが、単に Mitubisi だ。
スリー・ダイヤは業種を問わず、優良で、資産株だった。

 当時、アメリカでは Sony,Cannon,Mitsubisi が日本株の三種の神器だったようだ。
それに誰も異論はなかった。
 今もそうだ!

 否、そうだった。 ついこの間まで
 あの忌まわしいリコール隠しから
 
 三菱主要各社の
2004年4月15日前後の高値 / 6月23日の株価
3ヶ月の変化をここに提示する。

事業成績抜群の三菱グループも
人気の凋落は見るに忍びない。
当事者の自動車は半額になってしまった。

 三菱重工 <7011>     \350./295.    0.843 %
 三菱商事 <8053>   \1,250./1,015.   0.812 %
 三菱東京銀行<8306> \1,100./958.    0.870 %
 三菱自動車 <7211>   \350./171.     0.489%  2004.6.23
                   \113       2004.12.28
                  \179.       2005.01.18

2005の年初には年末の底入れから54%up の急反発。
理由は、三菱グループ・日産の支援が指摘されている。


社歴をたどれば
岩崎弥太郎(高知県安芸市出身)創設になる政商三菱は
 明治時代、九十九商会から三ツ川商会、三菱商会、
そしてあれよあれよと言う間に、三菱グループを形成していった。

三菱三綱領

三菱グループは三菱創始者である岩崎弥太郎の子、岩崎小弥太が
1920年に「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」を三綱領として制定している。
現在では、三菱グループはこの三綱領を自社の言葉で社是・社訓に展開している。

@所期奉公(事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、
かけがえのない地球環境の維持にも貢献する)
A処事光明(公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する)
B立業貿易(全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る)

閨閥から、加藤公明、幣原喜重郎という二人の首相を輩出した三菱は、
政商と呼ばれ、天下御免で、罷り通る Conglom.er.a'tion。
戦後、財閥解体されても、やはり寄らば大樹の基と復活し、
三井・三菱・安田・住友と日本の四大財閥の
一角を誇っている・・・

やんぬるかな、夢とロマンに満ちた三菱の業績も抜群の、
この資産株の急降下!

 時代は社会に「悪」の烙印を押されたら、もう逃げるところはない。
内部告発も法律で守られようとしている昨今、
政治家も、官吏、教授も例外なく社会に悪を垂れ流したら、
抹消される運命にある。
日本窒素もたいへんだ。
雪印も意外な結末を迎えた。
もちろん産業廃棄物が河川に悪を垂れ流していたら、
往復ビンタはダブルで返ってくる。

日本の命運を担う企業だけに
憂う。

スリー・ダイヤは
 いったい、この先はどうなるのだろう?
我が国のためにも、悲しい。

でも、三菱の結束は固い。
かって、「三菱鉛筆」という会社が上場した。

三菱は信用保持のために、
「三菱」と冠の付いたあらゆる業種の商標登録を行っていた。
三菱にとっては晴天の霹靂である。

当然、値段のことは言わないから・・と、買収交渉に出た。
ところが、失敗と見るや
「万一、経営内容に不安が生じた場合、如何なるテコ入れも辞さないから、
直ちに申し出て下さい。如何様にもさせてもらいます」
このように申し込んだ経緯がある。

天下の三菱だ。

昨今、社是一隅の「処事光明」に問題を抱えたとは言え、
三菱自動車を見捨てることは、よもやあるまい。
必ずや不死鳥・フェニックスとなって、
三菱自動車は甦るはずだ。

とは言え、昨今の情勢は余談を許さぬものがある。

天下御免の悪へのバッシングは行くところまで行くのか?
三菱グループ各社にも致命傷が及ぶのか!
グループからの切り捨て可能か?
およその見当もつかない。


 誰かが言ったよ。

「初めは些細なことだった」
「悪代官が懲らしめられるようだな」
「民主化がほんとうに確立されてきたのだ」

また、誰かが言った。

「碁に負けたときとよく似ているね」
「でも、碁は、もう一盤!があるけどさ」