奥義 つなげ!

                                 高野圭介

 20世紀から21世紀への移り変わり、その一エポックにあたって、
碁吉会で「碁歴50年の男性と、25年の女性」に自主申告していただいた。
 つまり、1950年にすでに碁を打っていた男性は14〜5人居たが、
1975年から碁歴のある女性は結構少なく、ほんの2〜3人しかなかった。

 私の場合といえば、1945年に敗戦を迎えたときは13歳だった。
 戦争最中の文化果つるところから、アメリカ文化至上主義の時代となり、
遊びをせむとや生まれけむ・・と遊びの坩堝に嵌り込んだように、
日々手当たり次第何かと遊びほうけたものである。
当時は他にすることとてなく、無秩序の時代だった。

「日々の繰り返し、これに飽きた方が負け」   大谷徹奘

 そうは言っても、深く静かに深耕するためには
窓口を拡げっぱなしの訳にはいかない。
それからは、遊びを選別し、放す作業が必要だった。
あれもこれもから、何かに絞り込む作業を始めた。

 まず体質に合わないものは止める。
一つ事は1,000時間を限度と考えた。
1000時間が過ぎて、なお結果のでないものは止す。
 こうして、ふるいに掛けられて、最後に残ったものが碁であった。
 
  そうでなくても、ゲーム自体の本質は「繋げる」というもので、
室内ゲームでも・・将棋・麻雀・七並べ・そして囲碁。
すべて繋いでいって初めて勝てるゲームで、
だいたい碁では中で石が繋がっていくのが流れがいいとされている。
屋外スポーツでも、野球、卓球、テニスでも、バレーだって、
球技はすべて、一つの球を繋いで繋いでいく。切れたら負けだ。

「一人は万人のために、万人は一人のために」
社会の万人と味良くつながっていく
繋いでいく・・・それこそ人生の奥義である。

イタリアでは英雄・ユリウス・カサエルを
 高校の歴史の教科書にこう教えている。

「指導者に求められる資質は次の五つである。知性。説得力。肉体の耐久力。
自己制御の能力。持続する意志。カサエルだけがこのすべてを持っていた」
塩野七生著 『ローマ人の物語 W序』 より

 カサエルは持続する意志によって支えられた。
倦まず弛まず励む者にこそ栄冠は輝くものを。

さもあらん。「継続は力なり」