自由と友愛

(ジェイコム株の誤操作)




                                           高野圭介


「愛」
2005年という今年を表す漢字に「愛」が選ばれた。
 「愛の地球博」「ゴルフのアイちゃん」「ピンポンのアイちゃん」。
そういえば、アイが日本中を席巻した年でもあった。

「友愛」
ところが、呼び方も、「いとしの愛」だが、「かなしの愛」とも呼ぶ。
 「友愛」は「友とのいとしの愛」だけであろうか。

三色旗  
ところで、フランスの三色旗は「自由・平等・友愛」を象徴していると言われるのだが、
確かに、フランス革命で、うるわしの人間像を取り戻した人間宣言であったのだろう。

矛盾
後年、この三色旗には大きな矛盾に包まれていると、言われている。
それは「自由と友愛の矛盾」

平等にしても、野島精二が「平等が人間の精神を破壊する」と、喝破し、
「行き過ぎた平等・人権は人間を破滅させる」と警語を発している。

契約時代
近代から現代に至って、いよいよ契約時代が覆ってきた。
自己主張を調整するいよいよの知恵の制度だ。
今、われわれはその契約時代の真っ只中にいる。

自己主張
パソコンのインターネットで、
知っていればどれだけ得の出来ることがいっぱいあるに反して、
知らないと損することが多い。契約時代だからである。

 仕事中、些細な粗相で、失敗した。

昔は、すぐ「ごめんなさい」と、謝るのが最上の後始末であった。
今は違う「なぜ、こういう失態をしたか?
その原因は自分をそのようにさせたなにものかに、問題があって、
「私自身にはその、20%?しかない」と、主張しなければ浮かばれない時代なのである。

ジェイコム株
先だって、ジェイコム株の誤操作で、証券界が大騒動をした。

 わずか15分程度の短時間の中で、
損した者が400億円を吐き出し、その分を誰かが儲けた。
強烈な話である。

行動の美学
その素早い行動を
「火事場泥棒のような」と批判が集中し、

与謝野経済財政金融担当相の言。
「誤発注と知りながら、他の証券会社がその間隙をぬって、
自己売買部門で株を取得するというのは美しい話ではない。
『行動の美学』を持つべきだ」と。

「自由」
この問題だが、経済活動、なかんずく、株取引というのは
全く平等の俎上で、自由に売買されている。

自由な経済活動に、情実の裏返しのような友愛の関与する余地があるだろうか。
しかも一瞬の研ぎ澄まされた感性が瞬時に反応した経済行為であったとしか思えない。
『行動の美学論』で、批判できるだろうか。


各社

全利益返上



2005年12月15日付けの報道によれば
ジェイコム株誤発注問題に関して、「証券六社が前利益返上へ」動き出した。

その案は、
自由と友愛を併用した案で、
公益機関を作って、それに寄付返還し、証券界の今後に備える案。

現在、誤発注のみずほ証券一社が全額負担している模様だが、
不整備の東証、不具合の富士通はむしろ、その大半の責を負うべきで、
すかさず買った日系二社、外資系四社は日本の道徳に従わないと、
疎外感に社会からはみ出てしまうことを怖れたかのようだ。

それにしても、今の金融界は既に、外資系の天下になってしまっている。
日本はグローバリズムに埋没してしまっている。

碁の友愛
碁を打つ時、
眼の中に指をつっこみ、馬の目を抜くようなことをしろと、言うのではないが、
相手の不備の形、不具合の筋の間隙をぬって、研ぎ澄まされた神経が働き、
ノーマルな手筋、奇襲のようなタイミングも駆使して、
相互が戦うのである。

友愛は、戦いすんで、相手の健闘を讃え合って、友情を深めることである。
戦いの最中に、友愛でもなかろう。
もし、
対局中に『行動の美学論』が存在するとすれば、マナーとでも言おうか

矛盾的統一
「自由と友愛」この矛盾的統一という世の中にわれわれは生きていく。