動き始めた汽車に・・ああ、 

 
                                             宮垣実

 魔の南口
   簡単に余裕を持って北改札口に着くはずが、
とんでもない遠い南の改札口を目指して移動したのは何か
魔物に取りつかれていた、としか考えられません。

  3番ホームでサンダーバード26号を見送り北の改札に出てきて眺めると
さっきそうめん食べた大きなビルが目の前70メートル先に
あったので驚いてしまいました。

重い手荷物   
  そういえば昨年高野先生が神隠しに逢われたとき、
駅員が地下道を行くように話したことを思い出します。



私の手荷物が重いので梅本さんがキャスターの上に
載せてくれたために、走れなくなったことも遅れた原因でした。

ついには紐も切れ、
荷物を抱えて走ったけれど間に合わなかったのです。

 動き始めた  
動き始めた列車のお尻を見送りました。

後で聞いた話だが、加田美保子さんが発車定刻過ぎてなお
列車を止めていたそうで、美保子さんの辣腕に舌を巻きました。

 ちきなおみ   
 北口の待合所で’ちあきなおみ’の喝采をつい唄って紛らし、
梅本さんに笑われていました。


 いつものように 幕があき 恋の歌うたうー わたしに
届いた知らせは 黒いふちどりがありました

  あれは三年前 とめるあんたら二人残し
  動きはじめた汽車に みんな跳び乗った



  
(ちあき なおみ喝采の曲でくちずさむ)