極めの棋譜

呉清源推奨の極めの棋譜の検証

                                       高野圭介


激動の昭和を生きた囲碁の神様”呉清源九段の映画
『呉清源 極みの局』が完成し、日本中で公開された。

「盤上は無限の宇宙。碁は調和なり!」と喝破された呉師の真髄に触れる最高の機会で、
関西棋院から、中野泰宏九段、瀬戸大樹七段も競演するというおまけ付きの映画だ。



呉清源推奨の極みの譜

「星に両バサミには星からの両ヅケ


なるほど凄い!

1994年のこと、陳嘉鋭九段の言ですが、

呉清源九段の鮮やかな感覚、
星に両バサミには星からの
両ヅケの筋が極みの手筋。
」と、
図1(打ち終えた図)を提示された。

注:手順は図2.(右をクリックして石が再現されます)


      .  
         図1                                       図2

     

元々、
私は「一間トビこそ
碁の根幹をなす動きであり、
美しく、強い姿」と信じています。

これこそ
「呉清源 極みの形・棋譜」
と信じて疑わなかった。


 1996年6月
橋本昌二九段に試みたのを皮切りに、
機会あるごとに試みてきた。
その後、一向にプロの打ち碁に表れない。

 2007年11月、
初めてプロの碁に表れた。

山陽新聞杯51期関西棋院第一位決定戦三番勝負第三局
黒番 結城聡vs白番坂井秀至の対局(11月22日)で、
白36手目からの変化である。



その幾つかの棋譜を提示する。
(右をクリックして石が再現されます)



最初から13年間待って、
ようやく素晴らしい変化に会った。


 したがって、
その間の試行錯誤の棋譜をお目に掛けたい。

注・碁吉会編『醍碁味』p.176.参照のこと


図2.橋本昌二 vs 黒 高野圭介



1999年6月、初めてプロに試みた。
手順中
「黒9は外から、アタリを打つべし」と
先生の評がある。

何とも美しい姿に感動した。


図3.佃 亜紀子 vs 黒 高野圭介



棋聖戦の前座を務めての一局。
白4とノビコマれて、
美しい形は無くなった。

図4.唐 騰 vs 黒 高野圭介



中国の友人・唐騰5段との一局。
黒12はたぶん悪手。
打たずもがな。


図5.王如南 vs 黒 唐 騰



中国棋院の5段を王先生から戴いた。
記念碁の時、

隣りで、唐騰さんが試みた。
黒7が問題だったか

図6.邱継紅 vs 黒 高野圭介



親しい中国のプロ棋士
白14でコウ発生。
右辺の白3子が少し重いと
その時、思ったが・・
図7.陳情薇 vs 黒 高野圭介



1999年度、中国学生第一位。
その後、
プロに転向して、当時二段。
白6は問題!と悔やまれた。

図8.今井昭三 vs 黒 高野圭介



さすが、明るいですね。

いかにも、簡明策。
図9.阪本清士 vs 黒 高野圭介



「白の三三入りは自然ですね。」
阪本さんはためらわなかった。

その時の、
黒はどうもキリかな・・・
黒とて、対応が難しい。


図10.坂井秀至 vs 黒 結城 聡



 2007年11月22日

山陽新聞杯51期関西棋院
第一位決定戦三番勝負第三局


本譜
白36手目からの変化である。


寡聞にして、プロ・アマを通じて、
私が実戦上で見たのは
この碁が初めてである。


極みの変化がようやくここに至って、
十数年間鶴首していた玄玄の妙が出現したのである。