祖型の基盤
碁は方円の戯
その哲学に於いて、チェスは王者の術であり、碁は遊技者の德と言うべし
高野圭介
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そもそも私が「碁の起源」について、格別の関心を持つに至ったのは
次の二冊の著書の以下の部分(若干省略加筆しています)に興味を感じたからである。
盤上遊戯の長い歴史を見ると、ある特定のゲームは常に先行する以前の時代のゲームに影響され、
その性質を受け継いで生まれてきた。興味の薄れたゲームは消滅するか、改良されて新しいゲームとなった。
それぞれの時代の人々のー社会的環境や感覚、趣向がそうごうされてー興味の合致するように改変されていく。
これが盤上遊戯の発展の法則である。 囲碁もこの法則の例外ではない。
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現在までの研究で、最も古い時代の遊戯盤が発掘されている地域は、ペソポタミア地方とエジプト。
そしてその周辺のいわゆる「肥沃な三日月地帯」。BC1000年期の遊戯盤はインダス川流域、
ギリシャを含む地中海沿岸地方や古代中国の遊戯盤も発掘されている。
「 碁」 増川宏一著より
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「チェスの遊びの象徴性の重要さは、一方では遊びそのものについて、
他方ではそれが展開される市松模様の盤について考慮されねばならない。
この遊びの象徴性はインドに起源し、(おそらくはチャトランガのこと。注:筆者)
明白にその戦略に結びつき、(中略)黒の駒と白の駒、
暗と明、巨人と神との戦いが繰り広げられる。(中略)」
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黒白、明暗、陰陽の二元対立等の強調において、このチェスの理解があるが、
これが根底に於いて囲碁の宇宙論的象徴と重なりあっているのは明白であろう。
もう反復する必要もないが、第一に碁盤は宇宙の模像である。
すなわち碁盤の象徴するものは宇宙あるいは世界を構成し運行させる循環の律動、
ほとんどタオ(道)そのものである宇宙の周期的生命力のリズムなのであった。
「囲碁の民話学」 大室幹雄著より
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碁は方円の戯であり、天地を象るところから、起源となった地域の人たちの宇宙観にも興味を持った。
ただ、大室幹雄の「チェスは将棋の一種であり、インド起源説の当否はさておいて、
囲碁とは駒の違いからしていちおう別系統の遊戯である。」そして
「その哲学に於いて、チェスは王者の術であり、
碁は遊技者の德と関連づけられていて、闘争とは二次的な意味しかない。」
私はこの論ではなく、敢えてチェス・碁共に起源を同じくする、
チャトランガを祖とするという仮説を展開したい。
高野圭介 識
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