第三章 囲碁の伝播

(15) 北インドから胡の国へ
                                                  高野圭介

林裕 説
 林裕は「あまり根拠が無く類推の域を出ないが、
碁はバビロンからインドを通って中国に渡った説がある」と
可能性を示している。
《文献22》

 世界最古の文明の発祥地といわれる
チグリス・ユーフラテスのメソポタミア文明は、
BC4,500年に栄えた都市国家で、経済、法律、教育等の分野に於いて、
現代のような優れた制度もあり、高度な文化もあったようである。

文明の曙
 ナイルのエジプト文明は BC 6,000年、インダス文明はBC 2,600年や、
さらには黄河文明は BC 8,500 年に遡るであろうとい言われるが、
これら文明のあけぼのといった時代にまで〈盤を使用するゲーム〉は
遡って考える必要があろう。

広く伝播


 古代社会で時代のギャップがあったと言ってもその切れ目はあろう筈がない。
メソポタミアあたりからエジプトへ、ギリシャへ、または、
インダス河流域へと交流があったように、
古代の遊戯盤も交易を通じて広く伝播したのだろう。

 本能は『戦い』
 自然だけではない。人と人の軋轢にも対処せねばならない。
民族間の領土の争いには政治以外には力と力がねじ伏せ合う実戦解決しかない。

人類の種族維持の本能は『戦い』である。
種族が全力を挙げて生き抜く戦いである。

碁も「模擬戦争」  
 将棋・チェスは戦いの陣形そのものだし、
駒の動きも「敵の王を誅する」という実戦の論理に適っている。

碁も「模擬戦争」から生じたものと推測したい。
思うに、戦力は今で言う歩兵のみ。戦いの陣形は平地。大よく小を封鎖し、捕獲する。
より高度な兵法を駆使するため、戦法の模擬作戦として、
戦いのシミュレーションにこのボード(盤)と駒が大いに寄与した筈である。

 このように、蟻の世界のような平板の二次元の宇宙観による碁盤は
「大地の空間的な模像的イメージ」として把握されていた。