第三章 囲碁の伝播

(16) 胡の国から
                                                  高野圭介

胡物至上主義
「胡」ないし「胡の国」については戎とも胡子とも言われるし、
或いは北狄とも書かれている。

 胡の国はペルシャ。中国では西果ての彼方に極楽があるよりも、
「胡」という凄い国があって、胡物至上主義が罷り通っていた。

日本のかっての「舶来」の感覚である。

「鬼」に纏わる話
 奈良大学、水野正好学長は「鬼」に纏わる話をされた。

胡神・胡鬼、という最強のものに始まり、
酔胡王面・酔胡従布作面の面。
胡鬼板」は羽子板、「胡鬼子」はその羽根。「胡酒」はワイン等々。



中国でも曖昧
「胡」の付いた名詞はどうも中国でも曖昧の代名詞で、中国の詞典によれば、

1,我国古代泛指住居北方和西方的少数民族

2,古代指従外族或外国来的(胡弓)

3,任意来乱:胡説・・・

胡の熟語
熟語では

「胡説」「胡説八道」:「胡址」・・・・・・でたらめを言う。

「胡話」・・・・・・でたらめな話(をする)・・・・と言うことだ。のこと。

「胡弄」・・・・・・愚弄する。誤魔化して仕事をする。お茶を濁す。間に合わす。

「胡吹」・・・・・・でたらめなほらを吹く。調子外れにでたらめを吹く。

「胡里胡塗」・・・・・でたらめ極まる。非常にぼんやりした。全く物の分からぬ。

「胡乱」「胡思乱想」・・・没有根据地胡乱瞎想:いい加減に。滅茶苦茶な。

「胡同」 ・・・・・・小巷:比較小的街道。・・・・・横町、路地、袋小路。

「胡須」・・・・・・ひげ。怒ったさま。

「胡子」・・・・・・ひげの総称。顔中ひげだらけ。匪賊。

「胡弓」:「胡琴」:「二胡」・・・・・楽器。


当時の先進国


分からんと
いうこと



 さて、この中から「胡」「胡の人」「胡の国」を想像してみよう。

 シルクロ-ドの更に西、ないし北の遙か彼方の国で、ひげもじゃの人が住んでいて、
そこから胡瓜、胡椒、胡蝶、胡弓や胡桃(くるみ)などが中国に入ってきた。

 いつ、どのようになどと講釈しても、何しろ昔の話で
でたらめで、ぼんやりした話。誰も知る人もない。


 それは多分、
今のイラン、つまり当時の先進国、メソポタミアという国じゃないか。
いやいや、そんな大昔のことまで分かったようなことを言うと、
人を愚弄すると言われそうな。

文化の移動
また、人類の移動・定住の歴史の図を見ていると、
音楽・将棋など文化の移動・定着と不可分の関係であって、
どちらかというと、ペルシャから中国への移動がまるで同一で、
何ら変わらないではないか。