橋本昌二プロのメンタル面


                                                     2016年04月

                                                    高野圭介

 昌二先生とのご厚誼
橋本昌二先生とは田舎の山崎時代から大阪は東洋ホテルでの
関西棋道会時代まで数十年間親しくご指導を受け、
昌二先生は「高野さんの碁はよく知っている」と言われていました。

先生は酒が好きで、お土産の酒5本を重いのに、提げて持ち帰られたことがあった。
煙草も好きで、対局中も片手は煙草だった。



禁煙の対局中、結城聡先生に取り上げられたと、聞いたことがある。
慣れない禁煙で、その碁は巧く打てたかな?

先生とは忌憚なく何でも話している。
その受け応えがいつも気取らず率直でさすが素晴らしかった。
振り返ってみると懐かしい限りである。

高野と昌二先生の会話
「碁は殆ど勉強しないでも、社会生活の大所高所から
ものを見る眼を止揚させるだけで強くなりますね。
その上達出来る限度は{4段}じゃないかと思っていますが。」

「私も同感です。会社の経営者、政治家など、4段の方は多いですね。
この{4段}には畏敬の念がありますね。」


「インドアゲームというものは、将棋でもマーージャンでもたいてい
百手ぐらいで勝負の目鼻が付くと思っています。碁も百手と言えませんか?」

「そうですね。碁は百二十手ぐらいかな?どうでしょう。」



「先生の格別なハイグレードの碁でも、定石はどのくらい通用するものですか?
また、定石を忘れてトイレに隠し持った棋書を読んでも構いませんか?」

「そりゃ定石は便利ですね。トイレの本は違反の決めはありませんが、
短時間に探すぐらいなら覚えられるでしょう。」


「先生は{メンタルな面}ということをよく言われますが、
心の平常心は難しいのでしょうね。」


「碁を打っていまして、平常心などは大切で、
メンタルな面が大きく勝負に関してきますね。」

 ご尊父・国三郎さん
昌二先生が未だ小学生低学年の頃、隣家の前野四郎さんの家に、
父・国三郎に連れられて、よく指導碁に来られていた。

「昌二先生は未だ子どもでしたから、トイレに階下に降りて、なかなか上がってこない。
不思議にと迎へに降りたら、昌二先生が階段の下で、オモチャで遊んでいた。」
と 四郎さんは言われていた。

       

また、ご尊父・国三郎さんは昌二先生に厳しく、アマに対しても負けを許さない。
時折、台湾時代から続いてきた賭け碁の世界の話を
訥々と話されていたのが印象に残っている。

勝負強さの研究
 ここに「ここ一番に負けない・・勝負強さの研究」折茂鉄矢著がある。

1.なるべく多様な勝負像を描くこと。
2.理屈より具体的な例で示すこと。
3.技術的なハウツーを探求すること。

 昌二先生は持ち前の闘力に加えて、メンタルも技術も一体となって、
こう言った修羅場を心でも勝ち取ってこられたのだろう。